「勉強時間を増やす」前に「勉強密度を上げる」(7)
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「勉強時間を増やす」前に「勉強密度を上げる」(7)
~ 小さな成功体験を早く経験しよう ~
試験合格請負人のあさだです。
現在、勉強密度と密接な関係がある「集中力」をあげる勉強法について、説明しています。
「集中力」が低い時と高い時では、全く異なります。
高い集中力がずっと続けばよいのですが、どんな好きなことでも、続けていると、疲れて、集中力が落ちてしまいます。
そんな時は、同じ勉強を続けるのではなく、違う分野の勉強に切り替えるのが一番望ましいです。
勉強を切り替える際のポイント、それが「サンドイッチ勉強法」です。
好きな科目があると、サンドイッチ勉強法ができるようになります。
勉強の切り替えもうまくいき、高い集中力を持続することができ、勉強成果も上がっていきます。
そのためにも、まず、好きな科目、得意な分野をつくるのが大事です。
では、どうしたら、好きな科目ができるのか、また、どうしたら、勉強すること、学ぶことが好きになるのでしょうか。
今回は、「脳を活かす勉強法」(茂木健一郎著)から説明したいと思います。
ドーパミンによる強化サイクル
■以下、「ドーパミンによる強化サイクル」といいます。
1.ある行動をとる
2.試行錯誤の末、うまくいく
3.ほめられる・達成感を得るなど、報酬を受け取る
4.ドーパミンが放出され、快感を得る
5.「1のある行動」と「快感」が結びつく
6.再び同じ行動をとりたくなる
7.うまくいく(上達していく)
このサイクルが回っていくと、好きになる、上達していきます。
「得手・不得手を考える時、私たちは、もともとの才能の有無のせいにしがちですが、生まれつき数学が得意な脳・苦手な脳というものはないのです。
大切なのは、ドーパミンによる強化サイクルが回るかどうか、この回路さえ回り始めれば、あとは簡単です。」「脳の働きの本質は『自発性』です。
どんな小さなことでもいいから自発的にやったことで「成功体験」を持たせることが大切。
成功体験なしには、脳は変わってくれないのです。」(「脳を活かす勉強法(茂木健一郎著)」より)
小さな成功体験は、
「ドーパミンによる強化サイクル」の
「1.ある行動をとる」→「2.試行錯誤の末、うまくいく」
になります。
「1.ある行動をとる」→「2.試行錯誤の末、うまくいく」と進まないと、ドーパミンによる強化サイクルは、回り出しません。
何か好きになるには、「1.ある行動をとる」→「2.試行錯誤の末、うまくいく」とドーパミンによる強化サイクルを回す、小さな成功体験をすることが大事になります。
では、どうすれば、最初から好きではない勉強で、「1.ある行動をとる」→「2.試行錯誤の末、うまくいく」とドーパミンによる強化サイクルを回すことができるでしょうか。
偶有性(ぐうゆうせい)
脳科学に「偶有性(ぐうゆうせい)」という言葉があります。
「偶有性」とは、半分は安全で予想できること、半分は予想できないこと、この両方が混ざっている状態のことをいいます。
脳は、予想できることと意外性のあることが混ざっている状態こそ、楽しいものとして感じとります。
そうなると、「挑戦的なもの」と「安全なもの」をどのように組み合わせるか。
これがすべてだといっても過言ではありません。
勉強でいうと、
「挑戦」 < 「安全」
簡単に解ける問題ばかりだと、単調な作業のように思えてくるので、あきてしまいます。
「挑戦」 > 「安全」
あまりに難しすぎると、どこから手をつければよいのか、分からなくなり、嫌になってしまいます。
「挑戦」 = 「安全」
二つのバランスがとれている状態(偶有性)に、脳は楽しいと思います。
脳が楽しい、ドーパミンが放出されるのは、「やさしすぎず、難しすぎず」の課題や問題に取り組んでいる瞬間です。
そういう経験をすると、その勉強、その科目は、「1.ある行動をとる」→「2.試行錯誤の末、うまくいく」とドーパミンによる強化サイクルが回り始め、やがて好きな科目となるでしょう。
脳の喜ばせ方を使って、強化学習の回路が向かう方向をほんの少しだけ軌道修正してあげる。
これが「脳を活かす勉強法」の極意として紹介されています。
これができる先生から学ぶ学生は、おそらく、その科目、学問を好きになっていくでしょう。
・「挑戦」と「安全」の二つのバランスがとれている状態をつくってくれる先生、環境とめぐりあう
・まず、一通りの科目を勉強して、「挑戦」と「安全」の二つのバランスがとれそうな科目を見つける
・大人であれば、自分で微調整を行う
「学び」の楽しさ
そもそも、学ぶこと自体、楽しいことではないでしょうか。
知識欲という言葉もあります。
知識欲とは、知識が欲しい、新しいことを知りたいという欲、新しいことを知って満足するのが、知識欲です。
かつて、古代ギリシャの大哲学者プラトンに、弟子のひとりが質問をしました。
「オリンピック競技の優勝者には賞品が与えられるのに、哲学者には賞品が与えられないのはなぜか」
という問いかけでした。その時、プラトンは次のように答えたと言われています。
「賞品とは、その人の功績と比較して、より価値のあるものでないと意味がない。
しかし、知恵を得る以上に価値があるものなど、この世には存在しない。
だから、知恵を得た人には、あげるべき賞品がないのだ」
また、小林秀雄さんが紹介している話に、
江戸時代に、本居宣長のもとに集まった近江商人たちが、
「先生、私たちはいっぱいお金を稼いで、ありとあらゆる道楽をし尽くしましたけれど、『源氏物語』などの講義を先生から受けてみましたら、学問ほどの快楽はこの世にないということがよく分かりました」
と言ったといいます。
願わくは、勉強のための勉強、試験のための勉強ではなく、学ぶ楽しさを味わって頂きたいと思います。
まとめ
○「サンドイッチ勉強法」 好きな科目のパンで、好きでない科目のハムをはさむ
○好きな科目をつくるには、勉強が好きになるには、小さな成功体験が大事。
○「ドーパミンによる強化サイクル」が回るようにする。
・「挑戦」と「安全」の二つのバランスがとれている状態をつくってくれる先生、環境とめぐりあう
・まず、一通りの科目を勉強して、「挑戦」と「安全」の二つのバランスがとれそうな科目を見つける
・大人であれば、自分で微調整を行う
(関連)
→ 勉強法って何?知らないと損する目からウロコの勉強法(1)
あさだ よしあき
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