人生100年時代に不安|死ぬ時はぽっくり死にたい?
こんにちは。”伝わる”技術研究家のみさきです。
最近、健診で病院へ行ったときに、70代位と思われるご年配女性2人が「死ぬ時はぽっくり死にたいわね」と話していたのが聞こえてきました。
長生きすることは幸せではない?
世界的に長寿トップクラスの日本人にとって「長生きできることは幸せなこと」という価値観が揺らいでいるようです。
日本人の多くは長生きすることを不安に感じている、という調査結果がありました。
平成28年の生命保険文化センターの「老後の生活」についての意識調査によると、日本人の約9割が不安感を抱いているようです。
100歳まで生きるのが当たり前となる、人生100年時代が到来すると言われていますが、そうなると不安になるのが、長期化する老後で貯金が尽きてしまうのでは、という心配でしょう。
人生100年時代には、定年退職が現在の65歳から75歳までに引き上げられるとも言われますが、退職後も100歳まで生きるとすれば、残り35年又は25年あります。
その間、その日暮らしとなれば、長生きすることが幸せだとは言えないのは頷(うなず)けます。
私は30代ですが、友人と年金や資産運用の話題がよくでます。
私たちが老後を迎える頃には公的年金の受給を受けられたとしても、それだけでの生活はまず無理でしょう。
これまでの人生設計モデルは崩れ、未知の領域に踏み込む人生100年時代、どうしたらよいか、不安を抱えている人が増えています。
理想の死に方は「ぽっくり死にたい」
こんな老後の不安からか「死ぬ時はぽっくり死にたい」という声が聞こえてきます。
2018年のホスピス財団の調査では、60-70代で「ぽっくり死にたい」と願っている人が約8割にのぼったそうです。
PPK(ぴんぴんころり)やGNP(元気で長生きぽっくり)を目指して、毎日運動をして、健康的な食生活に気を使う高齢者が多くなっています。
また、全国に「ぽっくり寺」とよばれる寺があります。
「ぽっくり寺」にお参りをすれば、長患いをせずに天寿を全うできるという信仰があるのだそうです。
人生100年時代に不安だが、本心は「死にたくない」
ところが本当にぽっくり死ぬのが私たちの願いなのか、考えさせられるエピソードがありました。
奈良県の有名なぽっくり寺に、大阪の婦人会の人たちが訪れました。
長患いで苦しんだり、家族に迷惑をかけるのは嫌だから、どうかぽっくり死ねますようにと、皆で願掛けをしたのです。
ところが、3日後、その中の1人が本当にぽっくり死んでしまった。
こうなると”あの寺のゴリヤクはほんまや” “霊験あらたかや”と大騒ぎになり、それからというもの「次はあんたの番や」「いやあんたこそ、真剣に頼んでおったで」と、仲間内でゴリヤクの押しつけ合いが始まったのです。
ちょっとした頭痛や腹痛がしようものなら「いよいよ自分の番か」と戦々恐々。
これではもうやってられんと、また皆でぽっくり寺へ、前回の祈願の取り下げに行ったそうな。
引用元:平成30年10月号『とどろき』
このエピソードから知らされるのは、私たちは苦しまずに「ぽっくり死にたい」と思っているものの、いざ死が予想もしないタイミングで迫ってくると、「まだ死にたくない」と切に願う、ということです。
それは、いよいよ死んでいくとなると、自分がどこへ行ってしまうのかお先真っ暗な心を持たずにはいられなくなるからなのでしょう。
「ぽっくり死にたい」というのは、経済的な苦しみや病気から逃れたいという願いであり、「死んだらどうなるのか」という底知れぬ不安に気が付いていない状態なのだと思います。
終幕の人生にならないと誰も気づかない落とし穴だから、チェーホフ(ロシアの小説家)は、代表作『六号病室』で「人生は、いまいましい罠」と表現したのかもしれません。
多くの人が臨終まで気づかぬ「死んだらどうなるか」の不安に、9歳にして驚き、出家されたのが、鎌倉時代の親鸞聖人という方です。
人生100年時代に突入しようとする今、自分の人生に正面から向き合う機会をもらっているように思います。
まとめ
老後生活の長期化により、生活費や健康面の心配から、長生きが幸せなのかと不安を抱える人が増えてきています。
死を迎えるまで元気に幸せに過ごし、最期はぽっくり死ぬことが私たちの切なる願いですが、本当に今死んでゆく時がきたら、慌てふためくでしょう。
幸せな人生100年時代を生きるには、老後生活から「死んだらどうなるか」という死生観まで見据える必要があるように思います。
みさき
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