正しく読みやすい文章が書けますか?|校正中によく見かける注意点(後)
こんにちは、本ブログで校正を担当しているこんぎつねです。
前々回の記事「正しく読みやすい文章が書けますか?|校正中によく見かける注意点(前)」では私が記事の校正をしているときによく見かける表現のうち、話し言葉でもしないほうがいい表現を、前回の記事正しく読みやすい文章が書けますか?|校正中によく見かける注意点(中)では、間違えやすい文章中のルールを紹介しました。
今回は読点の正しい使い方についてお話しします。
読点の使い方
ここでは読みやすい文章を書く上で必要な読点の使い方を解説します。
ただ読点の使い方は難しく、私自身も読点がきちんと使えているわけではありませんし、文章のプロである新聞記者や小説家でも正しく読点が使えている人ばかりではありません。
ですので基本的な原則のみを紹介します。
「、」(読点・テン)は
- 長い修飾語が2つ以上あるとき、その境界に点を打つ
- 語順が逆順の場合に点を打つ
- 強調したいところに点を打つ
- 重要でない点は打つべきでない
という原則があります。
例えば
「佐藤さんが近所のカレー屋に詳しい鈴木さんを小さい頃からカレーが好きな高橋さんに紹介した」
という文章を読んだ場合、スッと読める人はあまりいないでしょう。
「紹介した」のところまで読んだときには佐藤さんと鈴木さんの関係を忘れてしまって、意味がわからなくなっているのではないでしょうか。
こんなときには修飾語が長いものを先に、短いものを後にするとわかりやすくなります。
「小さい頃からカレーが好きな高橋さんに近所のカレー屋に詳しい鈴木さんを佐藤さんが紹介した」と語順を入れ替えれば、先ほどよりもわかりやすいと思います。
しかしまだわかりにくいことには変わりありませんので、読点の原則1(長い修飾語が2つ以上あるとき、その境界に点を打つ)に従って長い修飾語の境界に点を打ってみましょう。
「小さい頃からカレーが好きな高橋さんに、近所のカレー屋に詳しい鈴木さんを、佐藤さんが紹介した」
これなら高橋さんに鈴木さんを佐藤さんが紹介したことがよりわかりやすくなります。
一方で最初の文章を
「佐藤さんが、近所のカレー屋に詳しい鈴木さんを小さい頃からカレーが好きな高橋さんに紹介した」
としても「佐藤さんが~紹介した」ことがわかりやすくなります。
これが読点の原則2(語順が逆順の場合に点を打つ)です。
また同時にこのように点を打つことで「佐藤さんが紹介した」ことが強調されますので原則3(強調したいところに点を打つ)にも従っています。
原則3の強調の「、」は他の原則から外れている場合でも自分が特に強調したい部分に打つ「、」なため、「原則から外れているけれど強調のためにあえて打つ」という場合は他の原則を無視してもかまいません。
そこは読みやすさ、わかりやすさとの相談です。
では読点は打てば打つほどいいのかというとそうではありません。
「佐藤さんが、近所の、カレー屋に詳しい、鈴木さんを、小さい頃から、カレーが好きな、高橋さんに、紹介した」
では読む方も辛いですし、意味もわかりにくくなります。
読点を打ちすぎると強調したい部分がどこかわからなくなり、読点の意味がなくなります。
原則4(重要でない点は打つべきでない)に従って必要最低限だけ打つようにしましょう。
また、適切な位置に打たないと意味がわかりにくくなったり、文章の意味が変わってしまったりします。
「小さい頃から、カレーが好きな高橋さんに近所のカレー屋に詳しい鈴木さんを、佐藤さんが紹介した」
と打ってしまうと、佐藤さんが小さい頃からずっと高橋さんに、鈴木さんのことを紹介し続けていたことになってしまいます。
「小さい頃から」は「高橋さんに」にかかっているのに「小さい頃から」で切っているため、原則1に従っていません。
このように「、」は適切な位置に適切な数だけ打たなければならないため難しいのですが、読みやすくわかりやすい文章を書く上では必要なものです。
読み手のことを考えた「、」を打つようにしたいものです。
正しい言葉遣いと仏教
弊社では仏教、浄土真宗に関する小冊子を発行していますが、言葉遣いには細心の注意を払っています。
仏教を伝える上で言葉は命だからです。
「人が生きる意味」「人生の目的」を追求されたお釈迦さまが、その答えを人々に教えられたのが仏教です。
大事なことが説かれているからこそ、ほんのささいな言葉遣いの間違いで相手に誤解させてしまってはいけません。
あいまいな意味で使ったり不適当な使い方をしては仏教を正しく伝えられなくなってしまいます。
そのため私たちは週に1回、言葉遣いについて学ぶ時間を取っており、また毎朝「礼儀、身なり、言葉使い、身の回りの整理整頓を心掛けます」と書かれたカードを見て唱和しています。
(…余談ですが、「言葉使い」と「言葉遣い」では大辞林や広辞苑では同じとされていますが、メディアでは「言葉遣い」が一般的です。
一方で「言葉をツカう」と書くときは「言葉を使う」が正しいです。
「使」は名詞形、「遣」は動詞形で使われることが多いという違いがあります。)
まとめ
今までの内容をおさらいしますと、
- ら抜き言葉は使わない
- 二重敬語は使わない
- 「おられる」は間違いではないが控える
- 補助動詞はひらがなにする
- 「1」と「一」と「独」を区別する
- 「時」「事」などの形式名詞はひらがなにする
- 読点は必要なとき必要なだけ使う
です。
私も間違わないよう心がけたいと思います。
こんぎつね
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