感謝が幸福感を生む?|「ありがとう」が幸せを生むことが判明!
こんにちは。暮らしを良くする研究家のこんぎつねです。
あなたは今幸せでしょうか?
もしもこの問いの答えが「No」ならば、ぜひ知っていただきたいことがあります。
私たちは誰かから何かをしてもらい、それを幸せだと感じて感謝の心が出てくると思っています。
しかし実は、「ありがとう」の感謝の心から幸福感が出てくることが最近の心理学の研究からわかってきました。
目次
感謝が身体に与える影響
最近の心理学では、心で何かを思ったときに脳はどのような反応をしているかを調べることが多くなっています。
オックスフォード大学のマククレィティ博士とチルダー医師の研究では、頭の中で欲求不満なことを思い浮かべたときには心拍数が乱れ、心で誰かに感謝をすると心臓の動きが穏やかになることが分かりました。
また、心で感謝をしたときの脳波を調べたところ、リラックスしている状態を表すアルファ波が検出されました。
(参考:The Appreciative Heart:The Psychophysiology of Positive Emotions and Optimal Functioning)
心で誰かに感謝すると緊張状態がほぐれてリラックスできるのです。
しかしこれだけではわからないことがあります。
感謝が幸福感を高めているのでしょうか。
それとも幸福だから人に感謝するのでしょうか。
感謝が幸福感を生む
そのことについて、感謝が原因で幸福感が結果であることを明らかにしたのがペンシルバニア大学のセリグマン教授です。
セリグマン教授は研究参加者に、親切をしてくれたのに感謝を返せなかった人に向かって手紙を書いてもらい、その手紙を相手に届けるよう頼みました。
実際に相手の所へ行って、その人の前で「あのとき○○をしてくれてありがとう」と感謝の手紙を読むという行動をしてもらったのです。
このようなことをした参加者たちは何もしなかった人に比べて、幸福感が増して、抑うつが減り、1ヶ月間ほどその効果が続きました。
1ヶ月経ってもまだ「何だか自分は幸せだな」と思えていたということです。
ただし、6ヶ月経つと以前の状態に戻ったそうです。
(参考:Positive Psychology Progress Empirical Validation of Interventions)
6ヶ月で元の状態に戻ってしまうとしても、月に1回でも誰かに感謝の手紙を書いてその人に「ありがとう」という感謝を伝えれば、ずっと幸福感を保ち続けられることになります。
上の研究とは別に、南メソジスト大学のマクカラフ教授とカリフォルニア大学のエモンズ教授たちの実験では、週に1回ずつ10週にかけて「感謝したこと」「イライラしたこと」「印象に残ったこと」のどれかを5つ挙げてもらいました。
その結果、実験参加者が「感謝したこと」を書いたときは生活全般の評価、次の週への期待、身体症状が良好になりました。
また2週間毎日「感謝したこと」「イライラしたこと」「他人よりもよかったこと」のどれかを書いてもらった実験では「感謝したこと」を書いたときに参加者はポジティブ感情が増し、他人に対して親切をしようとする気持ちが強くなりました。
(参考:The Grateful Disposition: A Conceptual and Empirical Topography)
これらの研究により、幸福だから感謝をするのではなく、他人に感謝をする行動により幸福感が生まれることがわかりました。
日本人の「すみません」という特性
ここで注意点があります。
筑波大学の相川充(あいかわあつし)教授と大塚泰正(おおつかやすまさ)教授は学生、また社会人相手にマクカラフ教授などが感謝についての実験をやってみたところ上手くいきませんでした。
実験で感謝行動をしてもらった人の幸福感が増えていなかったのです。
この結果に対して相川教授はこう説明しています。
欧米人と違って日本人は「ありがとう」という感謝の気持ちと同時に、「迷惑をかけてしまった」という負債感情(ふさいかんじょう)も出てくる民族です。
私たちは何かをしてもらったときに「ありがとう」と感謝する以外に「すみません」と言うことがあります。
「すみません」とは「相済みになりません」ということです。
「あなたにこれだけ良くしてもらったのですから、私もその分お返ししないと相済みになりません」ということで、感謝の気持ちとしては別に借りを作ったお返しをしなければならないという義務感が出てきてしまうのです。
そのため感謝をしても欧米人ほど幸福感が上がりにくいのです。
日本人が感謝をする3つの方法
そんな日本人が他人に感謝をする方法について、相川教授は3つの感謝をする方法を挙げています。
感謝すべき出来事をときおり思い浮かべる
マクカラフ教授の実験のように感謝すべきことを思い浮かべます。
日本人は「すみません」の感情が出てきやすいので、特にその出来事で“自分に”どんないいことがあったか、について意識を向けてください。
感謝する相手を一人ひとり絞る方法もあります。
家族、友人知人を一人ひとり思い浮かべて感謝するのです。
これは非行少年に使われる内観療法と似ています。
感謝の気持ちを相手に伝える
セリグマン教授の実験では感謝の手紙を書いて本人の前で読みましたが、そのように感謝を伝えなければなりません。
感謝を伝える手段は手紙でもメールでも口頭でもいいですが、感謝は思ってるだけで伝えないと感謝の対人面の効果が表れません。
感謝される
感謝すると「すみません」の気持ちが出てきてしまいます。
負債感情が出やすい人の場合は感謝が逆に自尊心を下げるかもしれません。
しかし感謝される場合はそのような心配はいりません。
「ありがとう」と感謝の気持ちを言われれば「すまない」の感情は出ず、純粋に幸福感が高まります。
幸せになりたいならば、他人に親切をして「ありがとう」と感謝の言葉を言われて幸福感を高めてください。
(参考:感謝すると well-being は高まるのか?」)
お釈迦さまの教えられた心施(しんせ)
仏教を説かれたお釈迦さまは「幸せになりたければ人に親切にしなさい」と教えられ、『雑宝蔵経』というお経に、お金や物を持たない人でもできる親切の1つとして「心施(しんせ)」を説かれています。
心施とは心から感謝の言葉を述べることです。
「人に親切されたら感謝の気持ちを表して、心から感謝の言葉を述べなさい。そうすればあなたも幸せになれますよ」ということです。
他人に感謝を伝えることで相手も幸せにできて自分も幸福感を得られます。
お釈迦さまは2600年前の方ですが、セリグマン教授、マクカラフ教授、相川教授の感謝についての研究と同じことを、短い言葉で的確に教えられていることに驚きます。
まとめ
今回のブログで、感謝をすると幸福感が増すことが研究を通してわかりました。
しかし、日本人は親切を受けると「ありがとう」と感謝をすると同時に「すみません」と負債感情が出てきてしまい、純粋に感謝をすることができません。
それを踏まえて相川教授が勧める、
- 感謝すべき出来事をときおり思い浮かべる
- 感謝の気持ちを相手に伝える
- 「ありがとう」と感謝される
という感謝の方法が3つありますので是非実践してみてください。
また、お釈迦さまは心から感謝の言葉を述べる心施(しんせ)を勧められています。
幸せになりたいならば、他人に親切をして『ありがとう』と言われてください」と相川教授は言っていますので、どのようなことが親切になるのかを知っておきたいところです。
親切と言ったらどのようなことが思い浮かぶでしょうか。
すぐに思いつくのは家事を手伝ったり、重い物を持ってあげたり、忙しい人の仕事を代わりにやったりなどでしょうか。
これらはお釈迦さまが身施(しんせ)と言われた親切です。
心施と身施は発音は同じですが別物です。
身施とはどのようなことでしょうか。
こちらの記事で紹介しています。
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こんぎつね
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