仕事をサボる働きアリから学ぶ|仕事をサボる人への3つの対処法
こんにちは、暮らしを良くする研究家のこんぎつねです。
最近知り合いが社会人サークルを立ち上げたのですが、
「集めたメンバーの中にやる気のない人がいる(´;ω;`)」
とさっそく嘆いていました。
するとそれを聞いた人が
「世の中には『2:6:2の法則』があるからね。やる気のない2はどこかに行ってもらわないと」
と言っていたのですが、それを聞いて違和感を感じました。
「それってやる気のない2を排除したら新しい2が生まれるだけじゃないの」
と思ったからです。
そこで「2:6:2の法則」について調べてみました。
どうやら下位の2を抜いてもムダなようです。
働きアリの法則
そもそもその「2:6:2の法則」とは何なのか。そんな法則が本当にあるのでしょうか。
北海道大学の長谷川英祐准教授が発表した論文:「働かないワーカーは社会性昆虫のコロニーの長期的存続に必須である」によりますと働き者で知られる働きアリは実は、働き者のアリ、時々サボるアリ、ずっとサボっているアリの3通りがおり、この割合が2:6:2なのです。
これを調べるため長谷川准教授は、300匹のアリの頭、胸、腹に個体ごとに異なる色の組み合わせでインクで色を付けて目印にし、15分置きにアリが何をしているか調べるという恐ろしく繊細で目の痛くなる作業をしたそうです。
ちなみにこちらのアリゾナ大学の研究では半数のアリが働いていないと書かれています。
比率はアリによって違うのかもしれませんが、働きアリの中に働いていない”サボりアリ”がいるのは間違いなさそうです。
ここで働き者の2割のアリを取り除くとどうなるのでしょうか。
残りの8割のアリの中でまた働き者のアリが現れ、2:6:2が維持されるのです。
ではずっとサボっているアリたちだけを集めてサボりアリ集団を作ったらどうなるのでしょうか。
やはり今までサボっていたアリたちが働き出し、2:6:2の割合になります。
「いや、そんなのアリだけでしょ」
と思われるかもしれません。
以前あるテレビ番組で、幼稚園で園児たちに部屋の片づけをさせる実験がありました。
まず部屋で園児たちに好き勝手におもちゃで遊ばせます。
しばらく経ったら先生が「みんな、お片付けしてー」と呼びかけます。
たいていの園児たちは先生の言うことを聞かずに遊び続けますが、中には素直に片付け始める園児がいます。
そのちゃんと片付けをした園児だけを呼んで部屋から出すと、今まで遊んでいた園児の中で片付けをする子が現れます。
その子たちをまた呼んで部屋から出すと、また遊んでいた園児たちの中から片付けをする子が現れます。
この実験では片付けをする子の割合は常に2割程度でした。
アリと同じことが人間でも起こったのです。
このようなことが起こる理由を長谷川准教授は、アリにはそれぞれ反応閾値(はんのういきち)、いわゆる「腰の重さ・軽さ」があり、働き者のアリが疲れたときにサボっていたアリが代わって働き始めることで、巣全体を維持するためだろうと推測しています。
コンピューターシミュレーションで反応閾値を等しくしたアリの巣とバラバラにしたアリの巣では、反応閾値を等しくした=みんな働くようにしたアリの巣はみんな一斉に働く分、みんな一斉に疲れてしまい、巣が維持できなくなったのに対し、反応閾値をバラバラにした=働くアリと働かないアリがいるようにしたアリの巣は疲れたアリの代わりにサボっていたアリが働き始めるので、巣を長期間維持できたそうです。
このことから考えると人間の集団でも、10人いれば常にがんばるのは2人だけで、6人は時々サボっていて、2人は常にサボっていることになります。ですから
「あいつ俺がこんなにがんばっているのにサボって楽しやがって」
と腹が立つのはわかりますが、その人は組織の維持のためにサボっているとも言えます。
そのような人がいないと全員が一杯一杯になって組織の緩衝作用がなくなってしまうので、誰も有給休暇が取れず、産休や育児休暇も取れず、引き継ぐ人がいないため退職もできなくなってしまい、ちょっと別の仕事が入るとみんな残業しなければならなくなります。
あなたが体調不良で休んだときでも会社が回るのは、サボっている人がいるからなのです。
では、下位の2をサボるのを許して放っておいていいのかというとそうではありません。
下位の2を底上げすれば上の8も底上げされるのですから、その集団が成長するカギはやる気のない2にあるのです。
下位の2への対処法
具体的な下位の2への対処法は3つあります。
①.下位の2だけを集めて何かをさせる
常にサボっているアリだけを集めた集団がやはり2:6:2に分かれたように、下位の2だけを集めればその中で2:6:2に分かれます。
会議でちっとも発言しないメンバーだけで会議をさせれば自然と発言する人が出てきます。
いつも怠けている人だけを集めて何かの作業をさせればきっと積極的にやる人が現れるでしょう。
あなたは、「普段はこんなこと率先してやらないんだけど、他に誰もやらないから一番に手を上げてやってしまった」という経験はないでしょうか。
そのように下位の2だけを集めれば率先してやる人が現れるものなのです。
②.分業する
2:6:2に分かれると言っても別の面から見れば別の2:6:2になります。
営業成績が上位の2だから資料作成の上手さも上位の2に入るかというとそうではありません。
営業成績の2:6:2と資料作成の2:6:2は違います。
資料作成の2:6:2とプレゼン力の2:6:2はまた違います。
ある人は営業は得意だからやる気があるけど、資料をちまちま作るのは嫌いでダラダラやってしまう。
ある人は資料はパパっと作れるけど人前で発表するのは苦手でやる気が起こらない。
こんなふうに分かれるのではないでしょうか。
そんなときは1人でやっていたことを分業することで、それぞれの得意分野を活かすことができ、下位の2が出なくなります。
1つの分野で下位だからといってイコールやる気がない悪人ではないのです。
「あいつはサボっているから悪だ。いらないやつだ」
と思っても別の分野では立場が逆転するかもしれません。
「立場が変われば自分が最下位になるかもしれない」
と思えば自分よりがんばっていない人にも優しく接せられるのではないでしょうか。
③.上位の8が下位の2を捨てずに教える
下位の2なんていらないよ、と捨ててしまえば新たな下位の2が現れるだけです。
やがて自分が下位の2になるかもしれません。
それでは自損損他(じそんそんた)で自分も他人も不幸になります。
それよりも仏教で勧められる自利利他(じりりた)の精神で、下位の2を助けてはどうでしょうか。
「利他(りた)によるが故に、すなわちよく自利(じり)す」
という仏教の言葉があります。
「他人を幸せにするままが自分が幸せになる」ということです。
わからないことがあれば教え、苦手なことがあれば練習し、できないことがあれば手伝う。
そうすれば下位の2もがんばれますし、下位の2が伸びてくれば上位の2や中位の6の仕事を任せられるようになり、その集団全体が前に進むことになります。
下位の2に優しくするままが(利他)、自分たちに返ってくるのです(自利)。
まとめ
以上まとめますと、
- 集団は働き者の2、時々サボる6、常にサボる2に分かれる
- 2:6:2に分かれるのは集団にとって必要なことである
- 常にサボる2を動かすには「下位の2だけを集める」「分業する」「下位の2に教える」などの対処をする
「集めたメンバーの中にやる気がない人がいる」と嘆いていた知り合いには、2:6:2に分かれるのは仕方ないこととして、適切に対処をしてくれることを願います。
サボりがちな人を動かすには、こちらの記事で紹介した方法も役に立つと思います。
→え、君に任せたのに…|他力本願な人に仕事をさせる3つの方法
ちなみに腰が重いどころか腰が重すぎて本当に一生ずっと働かない「フリーライダー」というアリもいます。
「フリーライダー」はまったく働かずに、働き者のアリが取ってきた食べ物を食べて好きに産卵し、しかも「フリーライダー」の子どももまた「フリーライダー」になり、やがて巣を滅ぼすそうです。
さすがにフリーライダーまで面倒は見られませんので、このような人がいたら対応を考えたほうがいいかもしれません。
こんぎつね
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