母親嫌いの呪縛から解放|母親嫌いを糧にする心の持ち方
こころ寄り添う研究家の九条えみです。
「毒親」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
毒親とは、子どもを自分の思い通りにしようとし、なかには暴力や虐待、過度の干渉などによって支配下に置こうとする親のことを言うそうです。
文字通り子供にとって「毒」になる親のことです。
毒親に育てられた子供は、感情的に親を好きになれないものがあると思います。
ある60代の女性も、母親が嫌いだったという胸中を語られました。
目次
母親が亡くなっても、母親嫌いの呪縛が解けない女性
今年5月、母の三回忌を迎えます。
母が生きている間、私はどうしても母が好きになれませんでした。
性格のきつい母の言いなりの人生が嫌いで、
自分は母が亡くなるまで幸せになれないだろうと思ったこともあります。
私は親不孝者です。
自分を産んでくれた人をどうして好きになれないのか解らない。
今とても淋しい。どう心を立て直せばいいか分からないのです。
母親を亡くしてから3年経ってもなお、母親嫌いだった自分に苦しまれているのです。
この方のお気持ちとしては、母親が生きている間に母親のことを好きになってみたかった、というのが本音ではないでしょうか。
しかし、60年以上母親を嫌い続ける人生を歩んでしまった。
親は子供を大切に想い、子供も親に感謝するという理想的な親子関係を築けないまま、母親が亡くなってしまい、どう心の整理をつけたらよいか分からない状態なのだろうと思います。
この心を何とかしたいとの思いから、縁あって弊社の仏教月刊誌『とどろき』の購読を始められました。
購読して3か月後、平成30年6月号『とどろき』の感想ハガキをお寄せくださいました。
今年10月で69才になります。
体力の低下、家族の悩みで何のために生きているんだろう?と悩んでいました。
『とどろき』を読むようになってから、私は自分も周りもうまくいってないのは、心の持ち方が間違っていたのだろうと少しずつ思うようになりました。
毎日辛い中、これからは明るい心の種まきをしようと思っています。
仏様の教えに触れ、心のモヤモヤがだんだんと解消されているのですね。
この方が「明るい心の種まきをしよう」と思い立った特集記事の一部をご紹介します。
まず「心のタネまき」が大事
心で思うことも「行い」!?
運命は自分の行いが生み出すもの、とお話ししました。
「行い」と聞くと一般に、身体を動かしたり、口で言うことと思いますが、それだけでなく、心で思うことも行いだと、仏教では教えられます。
身体の行いを「身業(しんごう)」、口の行いを「口業(くごう)」、そして心の行いを「意業(いごう)」といい、これを「三業(さんごう)」といわれます。
中でも特に心の行い(意業)を重視します。
なぜなら、言ったり、やったり、口や身体を動かしているのは心だからです。
心掛けを変えると身体や口の行いが変わるのは、心が「元」だからです。
心掛けをほんの少し変え、実行することで毎日が変わっていくのです。
心が変われば、人生が変わる
私たちの日常生活の中でも、これは実感できることでしょう。
アメリカ出身の心理学者で、哲学者でもあるウィリアム・ジェームズは次の言葉を残しています。
心が変われば行動が変わる。
行動が変われば習慣が変わる。
習慣が変われば人格が変わる。
人格が変われば運命が変わる。
心掛けの変化は、必ず行動に表れ、善い行動の積み重ねは、やがて習慣化し、人格となってにじみ出てくるもの。
人格が変われば、その人の人生は全く新しいものに生まれ変わることでしょう。
「ネタミ」と「感謝」 心のタネまきの差で運命は大違い
心掛けの大切さは、スポーツ界の話題の中にも見ることができます。
2017年、カヌーの日本選手権で優勝した選手が、ドーピング検査で陽性反応が出て資格停止処分を受ける問題が起きた。
ところがその後、処分を受けた選手の飲み物の中に、他の選手が禁止薬物を混入させていたことが発覚。
今度は、この選手が8年間の資格停止処分を受けることになりました。
「東京オリンピックに出場できないかもしれないという焦り」から、ライバルを引きずり下ろしたいという、ネタミ、ソネミの心のタネまきが結局、自らの不幸な結果を生んでしまいました。
一方、2017年2月に行われた平昌オリンピックのスピードスケートで、金・銀のメダルを分かち合った小平奈緒選手(日本)とイ・サンファ選手(韓国)は、猛烈なライバル意識を持ちながらも、互いに尊敬し合っていた。
小平選手は「サンファはいつも親切です。3年前、ソウルのワールドカップで私が初優勝した時、悔しいはずなのに、飛行機の出発が迫る中、リンクから空港までのタクシーを呼んでくれ、お金も出してくれた。それがすごくうれしかった」と言い、
イ・サンファ選手も「彼女とレースをして悪い気持ちになったことは一度もない。彼女のライバルであることを誇りに思う」と話しています。
ライバルを「邪魔者」と見てネタむか、「向上させてくれる恩人」と見て感謝の心で努力するか。
心のタネまきによって、その人に現れる結果、いわゆる「運命」も180度変わってしまうのです。
(平成30年6月号『とどろき』より)
母親嫌いを感謝に変える心のタネまき
『とどろき』6月号の感想を頂いてから3か月後、この女性に電話で話を伺う機会がありました。
この女性は、自分なりに努力しているのに、めぐりあわせによって恵まれないこともあることに不満を抱いておられました。
兄弟のなかでも特に自分だけが損しているような気がして、「なんで自分だけが」という思いがあったそうです。
それが『とどろき』を読むうちに、先祖が悪いわけでもなく、「自分の心の持ち方が原因だったんだ」と見方が変わってきたように思う、と話してくださいました。
そして、私が感動したのは次の言葉です。
「子供の時は母が強くて、あまり喋ることが出来ず、一人で寂しかったです。
でも今は自分でもビックリするくらいおしゃべりになりました。
今は元気がない人に『頑張って』と声をかけられるようになりました。
(子供の時の寂しかった経験が)肥料になっているような気がします」
母親嫌いに苦しんでいた女性が、心のタネまきを変えたことによって、母親への感謝に変わったのです。
この方は母親を亡くされてから3年間も、母親嫌いであった自分を責め苦しまれていました。
その苦しみ悩みが、スッキリ無くなってしまった、というわけではないと思います。そんな簡単なお悩みでもなかったと思います。
なぜ母親嫌いから、感謝の気持ちに心が変わられたのでしょうか?
仏教では、自分に現れる結果のすべては、自分のまいたタネまきが原因だと一貫して教えられます。
この女性も仏教を学ばれたことで、母親や兄弟のせいで自分は苦しんでいたという他責の念から、自分のタネまきが原因だったと反省されるようになったのでしょう。
自分に原因があるとコトっと胸に収まれば、これからの未来は自分のタネまきによって作られますから、タネまきを良くしていこうと前向きな気持ちになるのです。
身体や口の行いは、心のタネまきが生み出すもの。
だから、母親嫌いであったこの女性も「明るい心の種まきをしよう」と心が変わられたのですね。
母親嫌いであった女性が、今では幼少期の寂しさを糧にして、元気のない人を励まそうと前向きに生きておられます。
毒親に負けない心のタネまきには、どんなものがあるでしょうか?
母親嫌いの場合、親子のスキンシップが乏しくて起こる「愛着障害」になっているかもしれません。
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九条えみ
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