リーダーになった人が陥る10の罠とは?|貞観政要に学ぶリーダー論(中)
こんにちは、暮らしを良くする研究家のこんぎつねです。
あなたはリーダー論の先駆けと言われる貞観政要(じょうがんせいよう)をご存知でしょうか。
前回の記事では貞観政要に載っている太宗の悪い行い十箇条のうち初めの五箇条について紹介しました。
今回は残りの五箇条を紹介します。
最初から知りたい方はリーダーになった人が陥る10の罠とは?|貞観政要に学ぶリーダー論(前)からお読みください。
(参考:古典に学ぶ -『貞観政要』の知恵-)
目次
六、口先だけで人を判断するようになった
陛下は最初のころは賢者を探し求め、善人が推薦した者を信じ、長所を用い、まだ賢者を求めることが足らないのではと心配していました。
しかし最近の陛下は自分の好き嫌いで人を判断しています。
多くの人が賢者だと推薦した人でも、誰か一人が悪く言えばその人を採用しません。
また長年信用して仕えた家臣でも、少し疑っただけで遠ざけてしまいます。
人を悪く言う人が、必ずしも賢者と言われている人よりも信用できるわけではありません。
少し悪く言う人があったからといって、長年仕えた者を遠ざけてはいけません。
君子の心は善を行い、徳を治めようとするものです。
小人の性は他人の悪口を好んで、自分のことばかり考えるものです。
しかし陛下は相手のことを深くお調べにならないで、口先の表面だけで相手の心を判断しています。
これでは君子は疎遠になり、小人が近づくことになります。
そのため家臣たちは失敗さえしなければいいと思い、能力を存分に尽くそうと思わなくなります。
これが終わりを全うできない第六の理由です。
七、政務そっちのけで遊びに出かけるようになった
陛下は最初のころは楽しみを求めることなく、狩りの道具を捨てて、狩り遊びができないようにしていました。
しかし最近の陛下は狩り遊びにふけるようになり、民からは批判され、鷹や猟犬の貢物が遠方から届けられるようになりました。
あるいは狩場が遠いからといって、朝早くでかけて夜遅く帰ってきます。
馬を走らせることを楽しみとし、不慮の事故や災難のことを考えていません。
これではたとえ外出時に不測の事態があってもお守りすることができません。
これが終わりを全うできない第七の理由です。
八、家臣をないがしろにするようになった
陛下は最初のころは敬う心をもって家臣と接し、陛下の恩は家臣全員に届き、家臣の心は陛下に届いていました。
そのため家臣はみな、全力で使命を果たそうとし、心を隠すことはありませんでした。
しかし最近の陛下は家臣をないがしろにするようになりました。
地方官が地方の状況を申し上げようと参上しても陛下はお会いにならず、お会いになっても地方官の希望をお取り上げになりません。
そうかと思えば突然、家臣のささいな悪い点を詰問します。
これではどんな優秀な者でも、忠心を述べることができません。
そうなりますと陛下と家臣が心を一致させて、安定した世の中を望むことは難しいでしょう。
これが終わりを全うできない第八の理由です。
九、傲慢になり欲望が大きくなった
陛下は最初のころは努力を怠らず、自分の意志を曲げて人に従い、自分に足らないところがあるかのようにしていました。
しかし最近の陛下はいばってわがままになり、ご自身の功績の大きいことを理由に過去の皇帝を軽蔑し、ご自身の賢さを理由に家臣を見下しています。
これは傲慢の心が大きくなったからです。
そのためやりたいと思ったら心の通りに行動します。
たとえ諫めに従うことがあっても、やりたいと思ったことを忘れることができません。
これは欲の心が大きくなったからです。
心では楽しみのことばかり考え、どこまで楽しんでも満足することはありません。
まだ政務の妨げとはなっていませんが、以前のように政務のことばかり考えることはなくなりました。
国内も周辺国も治まっているのに、遠方まで軍隊を行かせて僻地にいる異民族の罪を責めています。
これは欲望に際限がないからです。
陛下に近づきなじんでいる者は、みな陛下のご機嫌を取って何か思ってもあえて申し上げません。
疎遠な者は御威光を畏れて諫めようとしません。
このようなことが重なれば、陛下のお徳に傷がつくことになりましょう。
これが終わりを全うできない第九の理由です。
十、民の気持ちを考えないようになった
陛下は最初のころは天災が起こったこともありましたが、家を捨てた者はなく、苦しみを恨んだ者もありませんでした。
これは陛下の憐みの心を皆が知っていたからです。
そのため飢え死にすることがあっても陛下を悪く思う者はありませんでした。
しかし最近の陛下は民に労役をさせ、民はみな疲れ果てています。
工匠に休日返上で働かせ、兵士には仕事の日に別のことをやらせています。
売買の品物を地方から持ってこさせ、運搬人が道に列を成しています。
このため何かのきっかけがあれば暴動が起きやすくなっています。
もしも洪水や日照りのために穀物の収穫ができなくなれば、民たちの心は以前のようにはいかないでしょう。
これが終わりを全うできない第十の理由です。
この十項目が魏徴(ぎちょう)の諫言十箇条です。
次回はこの十箇条を言い終わった魏徴の総括の言葉と、聞き終わった太宗の言動を紹介します。
さんざん家臣から悪い点を指摘された太宗はどのような反応をするのでしょうか。
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