あなたの職場に仕事のチームワークを乱す「テイカー」はいませんか?
あなたの職場はチームワークが良いでしょうか。
「わがままな人がいてチームワークを乱して困っている」
「なんかお互いギクシャクしている。ケンカになることもある」
「それぞれが独自な世界に入っていてチームワークどころかチームな感じすらしない」
みんなで一致団結して仕事を進めていきたいのに、なぜかうまくいかない。
チームワーク良くお互い支え合っていきたいのに、なんかまとまりがない。
こんなことはないでしょうか。
実はチームワークが悪くなる原因はあなたの職場にいる「テイカー」の存在にあるのかもしれません。
全米トップ・ビジネススクール「ウォートン校」の史上最年少終身教授であり、「Give and Take」の著者である組織心理学者のアダム・グラント教授は「見返りを考えずに与えることが、将来の成功を導く」と言っています。
その上で組織の中には、チームワークを乱し、チーム全体の生産性を下げてしまう「テイカー」(奪う人)と職場のチームワークを育み、チーム全体の生産性を上げる「ギバー」(与える人)とがいると、こちらの講演で解説しています。
今回はこの講演の内容を要約して、チームワークが悪くなる原因を探りたいと思います。
目次
ギバー(与える人)とテイカー(奪う人)とは?
アダム・グラントは組織にいる人を3通りに分けています。
- テイカー(taler:奪う人)→他人に「何をしてもらおうか」と考える利己的な人
- ギバー(giver:与える人)→他人に「何をしてあげようか」と考える利他的な人
- マッチャー(mucher:中間)→他人に「何かしてくれたら何かする」と考える損得のバランスを取る人
アダム・グラントは世界中の様々な業界を分析した結果、それぞれの職業で最低の成績を出していたのはギバー(与える人)でした。
ギバー(与える人)は他の人から頼まれごとを引き受けやすく、そのために時間も体力もなくなってしまって自分の仕事が終わらないからです。
では成績が悪いからギバー(与える人)はいらない人なのでしょうか。
そうではありません。
チームワークが良い組織ほど、つまりは人々が助け合い、知識を共有し合い、面倒を見合う頻度が多い組織ほど、利益率、顧客満足度、従業員の定着率が高くなります。
ギバー(与える人)は自分の時間と体力を費やして、チーム全体に貢献しているのです。
では逆に最も成績がいいのはどのタイプなのでしょうか。
実は最も成績がいいのもギバー(与える人)なのです。
ギバー(与える人)の成績は最下位か最上位かの両極端です。
テイカー(奪う人)は一時的には成績が良くなっても、マッチャー(中間の人)に妨害されて成績が下がります。
他人に自分のやりたくないことを押し付けて、自分に都合のいいことばかりしているとしっぺ返しを食らうのです。
ですがこのような、マッチャー(中間の人)がテイカー(奪う人)を憎んで妨害している組織はチームワークがいいとは言えないでしょう。
どうしたらギバー(与える人)が成功する組織になるのか
ではどうしたらテイカー(奪う人)ではなくギバー(与える人)が成功する組織、引いてはチームワークのいい組織を作ることができるのでしょうか。
大事な点が2つあります。
1つめは、「組織にとって最も貴重な存在がギバー(与える人)であり、気を付けないと燃え尽きてしまう」と知ることです。
ギバー(与える人)はチームワークを良くしようと次々と他人の世話をして、そして疲れてしまいます。
そこで例えば「5分間でできる範囲で親切しよう」とギバー(与える人)に時間と程度を区切らせることが必要です。
2つめは、ギバー(与える人)が活躍できる環境を作るには「人に頼るのが当たり前」という下地が必要です。
人に頼れない、人に助けを求めない組織ではギバー(与える人)は不満を抱えます。
人に頼りやすい環境の中ならば、ギバー(与える人)は喜んで人のために活躍します。
ここで1つ問題なのは、テイカー(奪う人)が1人いると「あ、あいつに任せればなんでもやってくれるぞ。ラッキー」とギバー(与える人)になんでもやらせて疲れさせてしまうことです。
そしてギバー(与える人)は「みんな自分になんでもやらせる奴らばかりだ。がんばるだけ損だ」とやる気がなくなってしまい、チーム全体の生産性が悪くなります。
ギバー(与える人)とマッチャー(中間の人)だけならばそんなことは起こりません。
よってチームワークを良くして生産性を上げるために大事なことは、チーム内にギバー(与える人)を増やすことではなく、テイカー(奪う人)を排除することです。
テイカー(奪う人)がいなければギバー(与える人)は安心して他人に親切ができます。
ギバー(与える人)とテイカー(奪う人)の見抜き方
ではあなたとあなたの周りの中で、誰がギバー(与える人)で誰がテイカー(奪う人)なのでしょうか。
「陽気なムードメーカーはチームワークを良くする気がする。
だから人当たりが良く、陽気な人はギバー(与える人)だ。
逆に人当たりが悪く、陰気な人はテイカー(奪う人)だ。」
そういうわけではありません。
人当たりの良いテイカー(奪う人)もいれば、人当たりの悪いギバー(与える人)もいます。
人当たりの良いテイカー(奪う人)は詐欺師のように笑顔で人に近づき、他人を自分のために使います。
人当たりの悪いギバー(与える人)は改善点を指摘するので、上司から嫌われがちです。
しかし組織に必要なのは陽気なテイカー(奪う人)ではなく陰気なギバー(与える人)なのです。
アダム・グラントは「あなたのおかげでキャリアが劇的に向上したと思う人を4人挙げてください」と質問する方法を紹介しています。
テイカー(奪う人)はその4人に自分よりも影響力が上の人を挙げます。
テイカー(奪う人)は「あの人が成功したのは自分のおかげだ」と考え、立場が下の人のために何かすることはありません。
一方でギバー(与える人)は自分よりも地位の低い人、影響力の低い人の名前を挙げることが多いです。
「彼はあれが不得意だったけど、僕が教えた結果今ではうまく仕事ができている」という具合です。
組織からテイカー(奪う人)がいなくなり、ギバー(与える人)が安心して他人を助けられる環境をリーダーが整えることができれば、良いチームワークが生まれて組織の生産性を高めることができます。
因果の道理と自利利他(じりりた)
仏教では「自分さえ良ければいい、他人なんてどうだっていい」という考えを我利我利(がりがり)と言い、「相手を喜ばせるままが、自分の幸せとなる」という考えを自利利他(じりりた)と言います。
「自利利他(じりりた)」の「自利」とは自分が幸福になること。
「利他」は他人を幸福にすることをいいます。
自分の損得で動く「我利我利」の言動は最も嫌われ、
「幸せになりたければ、相手のことを考えて、まず与えなさい」
とお釈迦さまは勧められています。
アダム・グラント教授の話でいえば、「テイカー(奪う人)では不幸になりますよ。幸せになりたければギバー(与える人)になりなさいよ」ということでしょう。
まとめ
アダム・グラント教授は組織にいる人をギバー(与える人)、マッチャー(中間の人)、テイカー(奪う人)の3通りに分け
「ギバー(与える人)がチームワークを作り、組織の生産性を高める一方で、テイカー(奪う人)はギバー(与える人)になんでも押し付けて、やる気を削いでしまう。だから、テイカー(奪う人)を組織から追い出して、ギバー(与える人)が搾取される心配なく安心して他人の補助ができるような組織作りが重要だ」
と説いています。
実際には「ここからギバー(与える人)、ここからマッチャー(中間の人)、ここまではテイカー(奪う人)」のような厳密な線引きはできないでしょうし、テイカー(奪う人)を追い出すのも難しいと思います。
そのため、よりテイカー(奪う人)に近い人をギバー(与える人)寄りにするよう働きかけたり、テイカー(奪う人)寄りな人がギバー(与える人)寄りな人に仕事を押し付け始めたら制止していくことが組織のリーダーに求められると思われます。
チームのメンバーどうし、自利利他(じりりた)の心でお互いに助け合って、チームワークのいい組織を目指していきたいですね。
ギバー(与える人)とテイカー(奪う人)を見分ける方法ですが、こちらの記事で紹介している内容も役に立つかもしれません。
→組織のチームワークで悩んでいませんか?チームワーク能力5つの要素
こんぎつね
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