「同居か別居か」老後はどちらが幸せ?
こころ寄り添う研究家の九条えみです。
地元の同級生が結婚し、新居を構えました。
義父の田んぼを埋め立て、地盤改良した土地にマイホームを建てたそうです。
しかも、お互いの両親の家からそれぞれ徒歩1分の立地。
夫婦水入らずの生活もできるし、両親に何かのことがあれば、すぐに様子を見に行ける。
理想的な結婚生活だなぁと思いました。
二人は同じ地元の出なので、互いの両親が近くに居住していたからこそ実現できました。
しかし、地元を離れている人は、そう簡単にはいきません。
老後を考えると、同居にするか、別居にするか悩むところでしょう。
別居はやっぱり寂しい
老後生活を送り、子供と別居されている方の声として多いのは
「お盆や正月休みにしか子供が帰らず、寂しい」
「夫が亡くなり一人暮らしになって、子供も巣立ってしまって心細い」
「老後を考えると、同居できた方が心強い」
というものです。
大切に育てた子供が全く顔も見せず、電話もメールも寄こさないとなれば寂しいものです。
体力が衰え、病を抱える身になると、食事の買い出しや病院の送り迎えは子供にお願いしたいところ。
老後の心細さや、寝たきりになった場合などを考えると、同居を望みます。
同居できたら幸せ?
では、念願の同居が叶った人は、満足しているのでしょうか?
71歳の女性の声を聞いてみましょう。
主人が亡くなってもう8年ほど経ちました。
しばらくパートをしながら一人暮らししていましたが、1年ほど前に娘と娘の主人も一緒に住みましょうと言ってくれたので、バカだから一緒に住み始めたんです。
テレビやベッドもあるエアコン付きの部屋で贅沢させてもらっていますが、3日で嫌になりました。
色々と気を遣います。こんなことは娘が家に居たら、絶対に言えません。
友達にも相談しましたが、それは娘の夫婦仲が良いからだ、仲が悪かったら絶対に一緒に住みましょうなんて言ってくれない、贅沢な悩みだと言われました。
家を出ようかとも思いましたが、一度一緒に住み始めたら、そんなことも娘に言えません。
九州から大阪へ同居のために引っ越されたそうです。
70歳を過ぎて住み慣れた土地を離れ、新生活を送る不安は若い頃の比ではないでしょう。
気楽な一人暮らしを8年していた身にとって、若い人たちとの生活についていけない所も多々あるのではないかと思います。
同居・別居どちらが幸せとは言えない
別居している時は、同居できたら互いに協力しあえてどんなに幸せだろうかと思います。
そんな人が同居したら、最初こそ満足かもしれませんがしばらく時間が経つと、
一人で静かに過ごしたい時間にも孫の子守に追われ、
1人分の食事で良かったものが家族5人分の食事を作ることになり、
子供夫婦に邪魔者扱いされないように気を遣って暮らすようになる。
そうなると「あぁ、別居していた時のほうが気楽で自由だったな」と、また別居したくなります。
仮にまた別居したとしても、災害のニュースや孤独死のニュースが目に入ると、
高齢の一人暮らしは心細く思え、また同居したいと思うでしょう。
同居か、別居か。
どちらが幸せとは言えないのが実態です。
私たちは「無い」不安や苦しみを克服し「有る」状態を望んでいます。
しかし、「有る」ようになっても、そのことでまた新たな悩みが生じる。
これをお釈迦さまは「有無同然(うむどうぜん)」と教えられました。
有っても無くても苦しんでいることには変わりがない、ということです。
金、財産、名誉、地位、家族、これらが無ければないことで苦しみ、
有ればあることで苦しむ。
有る者は”金の鎖”、無い者は”鉄の鎖”に繋がれているようなものです。
材質が何であれ、縛られ、苦しんでいることには変わりがありません。
今回の例でいえば、同居しても別居しても、何かしらの苦しみや悩みは避けようがありません。
苦しみの根本原因を知ることが先決
有無同然(うむどうぜん)の苦しみは、木でいうと枝葉のようなもの。
枝葉を切っても切っても、根っこを対処しない限り養分を送り続け、新たな枝葉が生まれます。
人生が”一難去ってまた一難”となるのは、苦しみの根本原因を知らないからだとお釈迦さまは言われます。
仏教は苦しみの根本原因を明らかにし、苦しみの根本原因を断ち切る教えです。
苦しみの根本原因は、金、財産、名誉、地位、家族など日頃私たちが求めているものではありません。
心の底の奥にあるものなので、他人から指摘されて気づくものでもなければ、自覚できるものでもありません。仏の智恵によって教えてもらう必要があるほど根深いものなのです。
同居にするか、別居にするか。
互いが納得できるよう家族間でよく話し合って決める必要があるのはもちろんですが、どちらにしても必ず不都合は出てきます。
枝葉の苦しみの対処も生きていく上では大切ですが、人生の時間は限られています。
苦しみの根本原因を知り、断ち切る。
ここに集中していけば、日常の雑多な悩みは案外小さく思えるかもしれません。
この記事を読まれている人の中には、子供と同居したくても叶わなかったという方もいらっしゃると思います。
見方を変えてみたら少しは心が楽になるかもしれません。
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九条えみ
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