「愚痴一つこぼさずやってこれた」25年の介護生活を支えた言葉とは

2025年は、「団塊の世代」が75歳を迎え、約5人に1人が後期高齢者となります。

介護を必要とする人も年々増え、厚生労働省によると、要介護(要支援)認定者数は2000年の218万人から、2022年には690万人と3.2倍に増加しています。

共倒れしないよう、介護する側への支援やメンタルケアも大切でしょう。

今回は、「ある言葉」に支えられ、愚痴一つこぼさず25年の介護生活を乗り越えた女性をご紹介します。

介護現場のリアルな声

介護にはお金も時間も体力もかかり、しかも子育てと違って終わりが見えません。

弊社に寄せられた介護現場のリアルな声をご紹介します。

両親の介護で右半身動かない状態になりました。介護中は毎日死にたいと思っていました。
(72歳・女性)

家内を介護しています。若い者は若い者だけで年寄りには全く関心がない。寂しい思いをしています。
(90歳・男性)

義理の両親を介護しています。認知症が出て、ついつい怒ってしまうと「死んだ方がいい」と言われてしまい、何をしているのだろうかと思いました。実の親は施設に入っていますが、「姥捨て山に捨てられた」と言っています。“なぜ生きるのか”を考えてしまいます。
(61歳・女性)

介護される側も、自分の体が思い通りに動かせない不自由さや、認知症で次から次と記憶が無くなっていく恐怖を感じて、ストレスがかかっているでしょう。

そして、介護する側も、心無い言葉をかけられたり、自分が放ってしまったりして、何のために苦労しているのかと絶望したくなることもあるでしょう。

愚痴の一つや二つこぼしたくなるのも無理からぬ状況だと思います。

そんな中で、ある言葉を支えに介護生活を乗り越えられた女性がいます。

25年の介護生活を支えた言葉

当時81歳の女性が、注文のお電話で語られました。

「主人が車の事故に遭い、25年介護しました。ため息が出るときもあったんですが、『あれを見よ みやまの桜 咲きにけり 真心つくせ 人しらずとも』の色紙をいただいてから、愚痴一つこぼさずやってこれたんです!」

明るい声色で、電話口の晴れ晴れとした表情が目に浮かぶほどでした。

改めて、歌の意味をご紹介しましょう。


あれを見よ みやまの桜 咲きにけり
真心つくせ 人しらずとも

・・・・・・・・・・・・

見てごらん。

奥深い山に立つ桜の木々は、誰も見ていないのに、美しい花を咲かせている。

私たちも、たとえ誰からも見られていなくても、心を込めて、善い行いに努めたならば、必ず、その結果は、善い行いをした本人に現れるのですよ。


このお歌は、仏教思想から出たものでしょう。

あの平家一族も仏教思想で救われた

日本には古くから仏教思想が根付いています。

平清盛の次女、徳子(とくし)(建礼門院)も、仏教思想によって救われた一人です。

弊社発行の『月刊 人生の目的』から、一部ご紹介しましょう。


平安時代の終わり頃、京都の大原に、悲しみのどん底に突き落とされた女性がいました。平清盛の次女、徳子(建礼門院)です。

一人息子(安徳天皇)も、母親も、親族も、皆、一年前に、壇ノ浦の戦いで源氏に追われ無残な最期を遂げました。

徳子も海に飛び込んで死のうとしましたが、意に反して助けられたのです。戦の後、彼女は出家して、大原の寂光院で仏教を聞き求めていました。

ある人が、徳子を慰めようとして寂光院を訪ねてきた時、そばに仕えている尼が、こう答えたと『平家物語』に記されています。

「徳子様は、もう、悲しんだり、嘆いたりはしておられません。釈迦の金言、
『過去の因を知らんと欲すれば、現在の果を見よ。未来の果を知らんと欲すれば、現在の因を見よ』
をお知りになってから、前向きに生きていらっしゃいます」

この釈迦の金言は、因果の道理を表したものです。次のような意味です。

過去の因を知らんと欲すれば、現在の果を見よ
過去に、善いことをしたか、悪いことをしたかを知りたければ、現在、自分が受けている結果(運命)を見なさい。どんな結果も、すべて過去の自分の行為が原因となって現れてきたのである。

未来の果を知らんと欲すれば、現在の因を見よ
未来、幸せになれるか、不幸になるかを知りたければ、現在の自分の行為を見なさい。善い行いをしていれば幸せになれる。悪い行いをしていれば不幸になるのである。

因果の道理を知らされた徳子は、今、苦しい目に遭っているからこそ、少しでも善いことをしていこうと心を入れ替えることができたのでした。

「自分が、こうなったのは、あの人のせいだ」と、他人をうらんでいるうちは、決して楽になれません。相手を心で切り刻み、さらに悪を造りますから、ますます暗い人生になってしまいます。

未来の運命は、これからの自分の行いによって、変えることができるのです

『月刊 人生の目的』令和6年6月号より)


仏教では、私たちの「幸・不幸」を生み出す因果関係を教えらえています

これを【因果の道理(いんがのどうり)】といいます。

『月刊 人生の目的』で解説した内容を一部ご覧いただけます。

▼ ▼ ▼

【因果の道理】誰もが知りたい運命の仕組み 「幸・不幸」を決めるポイント

The following two tabs change content below.
Avatar photo

九条えみ

チューリップ企画では、お客様サポートおよびウェブでの情報発信を担当しています。仏教を学んで約10年。仏教の視点からお悩み解消のヒントをご紹介できればと思います。
心が穏やかになった人へ
心が穏やかになった人へ

おすすめの記事