若手社員との円滑なコミュニケーションは加点方式【後編】|加点方式コミュニケーションとは?
心穏やかアドバイザーのヒロカズです。
若手社員とのコミュニケーションを改革する方法の1つとしてこれまで2回に渡って加点方式のコミュニケーションを紹介してきました。
【前編】では話し方について「ニ択で聞いて発言を求めない」ということ、【中編】では「同じ言葉で2回褒める」ということを中心に紹介してきましたが、【後編】となる今回は「話の聞き方」について加点方式コミュニケーションの方法を紹介します。
目次
コミュニケーションは「声」から「文字」へ
本屋に行って「聞き方」についての本を探してみるとほとんど置いていないというのが、実感ではないでしょうか?
最近は少し増えてきたようにも感じますが、「話し方」の本に比べると圧倒的に少ないのが「聞き方」についての本です。
「話し方」については最近の学校教育でも教えられるようですが、「聞き方」については学ぶ機会そのものがほとんどないと言ってもいいでしょう。
ところが、若手社員とのコミュニケーションを円滑する時に身に付けなければならない大事な要素が「聞き方」なのです。
大学を卒業して約20年の間、18歳から22歳の若者に毎年100人以上接してきた私が感じたことは
「今の若手は自分の話を聞いてもらった経験がほとんどない」
という実態です。
コミュニケーションの主体が会話からLINEやツイッターなどの文字にかわり、声を出す機会が減ってきているので、そもそも話慣れていないということもあるでしょう。
しかし、それ以上に文字でのコミュニケーションは会話に比べて、記録に残りやすく、拡散しやすい為に、ちょっとしたやりとりが公開され、それがきっかけでいじめに遭った人を見たり、、LINEグループ内で発言が無視された次の日に教室でも皆から無視されたりということを経験した若者は、自分のことを文字でも会話でも発信することに慎重な傾向があるのかもしれません。
若手は自分のことが話せない
かつて東京都内の有名私立中学では入学初日からクラスのLINEグループができ、そこに9割のクラスメートが登録されるという話を聞いたことがあります。
その私立中学はクラスメートのうち7割が付属小学校から中学にきたメンバー、3割が中学受験によって入学したメンバーだそうです。
そのLINEグループには1時間に500件近くの発言があるそうですが、そのほとんどが付属小学校から来た一部のメンバーの発言です。
大多数はその発言に追従したリアクションをするか、閲覧するだけの人。
流れてくるLINEを常に確認して反応しないとクラスでいじめに遭う対象になるならば、人気の序列でクラスの中の立ち位置が決まる「スクールカースト」を超えた、LINEを支配する王が絶対的な権力を行使する現代版「絶対王政」が若者の間では台頭してきているのかもしません。
若手が自分のことを語ることがますます難しくなってきているのでしょう。
そんな若手社員とのコミュニケーションをとる場合、若手社員が話をしやすい「聞き方」ができるかできないかで今後のコミュニケーションが大きく変わってくるに違いありません。
もしかしたら、「話し方」以上に「聞き方」のほうが今後ますます大事になってくるかもしれません。
その「聞き方」について加点方式コミュニケーション版を次に5つ紹介します。
加点方式コミュニケーション、5つの聞き方
加点方式の聞き方5つ
- 大きくうなずく
- 大きな声であいづちを打つ
- 積極的に感情を表す一言を加える
- 沈黙するまでこちらから話さない
- 心から真剣に聞く
①大きくうなずく
相手の話を聞く時にうなずいて聞くことが大事だと言われます。
すでに実行している人が多いと思いますが、相手に伝わるうなずき方となると簡単にはいかないようです。
実際に誰かとペアになってうなずいて話を聞いてもらってください。
その際、
- 自分の話をうなずかずに聞いてもらう
- 首を少し縦に振って聞いてもらう
- 大げさなくらい首を縦に振って聞いてもらう
の3つの方法でやってみてください。
きっと③の大げさなくらい首を縦に振って聞いてもらった時が、一番、話を聞いてもらった感じがすると思います。
うなずくほうは大げさすぎないかと思っても、話している側からすれば、普通にうなずいて聞いてもらっていると感じる程度ではないでしょうか?
意識して大きくうなずかないと話をした相手にリアクションが伝わりません。単にうなずくのではなく大きく首を縦に振ってうなずくことが加点方式のコミュニケーションではまず大事です。
②大きな声であいづちを打つ
次に大きくうなずくだけではなく、声に出して「なるほど」「うーん」「そうだよね」などとあいづちを打って話を聞くことが大事です。
その時もただ、声に出すのではなく大きな声であいづちを打ってください(ただし、場所によっては大きな声を出せないところがあります)。
これもいつもの声の大きさのあいづちと大げさだと思うくらい大きな声のあいづちとをやってみてください。
どちらのあいづちが相手に伝わるあいづちになっているかがわかります。
単にあいづちを打つのではなく大きな声であいづちを打つことが加点方式のあいづちです。
③積極的に感情を表す一言を加える
大きな声であいづちが打てるようになったら、あいづちと一緒に感情面に焦点を合わせた言葉を一言、加えましょう。
「なるほど、それは大変だったんだね」「うーん、悲しいね」「そうだよね、それは腹が立ったよね」「ほんと、嬉しかったでしょう」というようにその時の若手がどう感じたか思ったかという感情を想像して言葉に表す努力をしましょう。
感情を言葉に表し、若手にこちらから発することで若手は自分の気持ちを語る必要がないだけでなく、気持ちを代弁してもらったことになります。
それによって、自分のことを語るのに慎重な若手への心理的負担が少なくなるでしょう。
これはちょっと努力が必要ですが、感情を表す一言をこちらから積極的に語ることが加点方式の一言です。
④沈黙するまでこちらから話さない
その上で若手が沈黙したり、「〇〇さんも何か話したらどうですか?」とこちらに話の主導権を与えるまで、ひたすら話を聞き続けるのが加点方式の聞き方のポイントです。
1時間でも2時間でも相手の話が終わるまでひたすら聞き続けることが大事です。
若手から求められるまでこちらの意見、アドバイスを語ってはなりません。
途中で話を遮ったり、こちらから話し始めると若手は否定されたと思い、もう話をしなくなります。
沈黙するまでこちらから話さないというのが加点方式の「聞き方」です(私の場合はどんなに長くても3時間で話が終わりました(笑))
⑤心から真剣に聞く
最後に話を真剣に聞いてください。心から聞いてください。
一人の人間として敬意を持って話を聞くことが大事だと思います。以前、苦しみを打ち明けてきた人の話を真剣に聞けば半分は苦しみを解消することができると聞いたことがありますが、自分のことを話す機会が減っている若手の場合、どんな話でも真剣に心から聞くことが加点方式の「聞き方」です。
まとめ
ここまで加点方式の聞き方について5つ紹介しました。
どれも若手に自分のことをもっと話をしてもいいのだよという肯定的なメッセージを送る為の方法です。
「話し方」「褒め方」にも一貫して共通するのは肯定的なメッセージをいかに送り続けることができるかということです。
インターネットの発達により減点方式から加点方式にシフトしている現代において、加点方式のコミュニケーションはこれからもっと必要性が増してくるでしょう。
若手社員とのコミュニケーションに悩む人が「話し方」「褒め方」「聞き方」の3つの加点方式コミュニケーションを身に付け、若手との円滑なコミュニケーションを行うことができればこれ以上の喜びはありません。
おまけ
考えてみれば、「話し好き」ということは聞いたことがあっても「聞き好き」と聞いたことがないように人の話を聞くことは楽しいことではないのでしょう。
しかし、若手とのコミュニケーションを円滑にするには「聞き方」が非常に大事なことはこれまでの内容でおわかりになったのではないかと思います。
実はこの加点方式の「聞き方」の心は仏典(ぶってん)に記された観音菩薩(かんのんぼさつ)の「観音(かんのん)」の心に思いを馳せてのことです。
「観音(かんのん)」とは「音を観る(みる)」と書きますが、この「音」とは人々の苦しみ悩みの嘆きの声を表していると言われます。
また、「観る(みる)」とはその嘆きを聞くことを表していると言われますから、観音菩薩(かんのんぼさつ)とは人々の苦しみ悩みの嘆きを聞く菩薩(ぼさつ)ということになります。
この観音菩薩(かんのんぼさつ)とは仏様の王である阿弥陀仏(あみだぶつ)の慈悲の象徴だと言われます。
いつでもどこでも人の話を真剣に聞ける人は仏様の王である阿弥陀仏の慈悲を体現し、実践しているのでしょう。
(関連)如来と菩薩はどちらが偉いの?
ヒロ☆カズ
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