すべての悲しみを解決する「時薬(ときぐすり)」「日にち薬」とは
わかりやすく仏教を伝える研究家、あさだです。
医学が発達して、いろいろな薬が発明されています。
おかげで、昔は治らなかったが、今は治療できる、そういう病もあります。
しかし、どの病にも効く薬というものはありませんし、深い心の悲しみを治せる薬もありません。
では、題名にある『すべての悲しみを解決する「時薬(ときぐすり)」「日にち薬」とは』とは、どういうことなのか、今から説明したいと思います。
「時薬(ときぐすり)」「日にち薬」とは
「時薬(ときぐすり)」「日にち薬」とは、飲む時間が決まっている薬のことではありません。
英語のことわざに
Time cures all things.
とあります。意味は「時は全てを癒してくれる」
肉体の病、また、骨折は、時間の経過とともに、治っていく場合があります。
その時に、時間が薬のように例えられて、「時薬」「日にち薬」と言われます。
(「日にち薬」を漢字で書くと「日日薬」となり、読みにくいので、「日にち薬」で統一したいと思います。)
また、大事な人が亡くなった深い悲しみなどは、「すべては時間が解決してくれる」とも言われますように、時間にしか癒せないこともあります。
そのような時にも「時薬」「日にち薬」という言葉が使われます。
悲しんでいる人にとっては、この悲しみがずっと続くかのように思いますが、決して永遠に続くものではないことを伝えることで、少しでも楽になってほしいという心が込められています。
忘れることは悪いことではない
大事なことを忘れて、他人に迷惑をかけてはいけませんが、どんなことも永遠に忘れないというのも、また、苦しいものです。
自分にとって、悲しいことを忘れるというのは、決して悪いことではありません。
いつまでも覚えていると、ずっと過去にとらわれてしまい、未来に向かって、一歩、踏み出すことができません。
大事な人を亡くした悲しみ、苦しみは、簡単に消えるものではありませんが、「時薬」により、癒されれば、大事な人とのよい思い出と共に、生きていくこともできます。
「時薬」を使わずに、早く忘れようとしても、忘れられません。
○○を忘れようとすればするほど、○○を思い出しますから、○○を忘れようと思っても、忘れることはできません。
「時薬」が効いてくれば、自然と忘れることができるのです。
「時薬」が早めに効く心がけ
実は「時薬」が早めに効く心がけがあります。
それは仏教に教えられています。
過去の因を知らんと欲すれば、現在の果を見よ。
未来の果を知らんと欲すれば、現在の因を見よ。(釈迦)
(意訳)
過去にどんなことをやってきたか、知りたければ、現在の結果を見ればわかる。
未来にどんな結果がくるか、知りたければ、現在、どんなことをやっているか、見ればわかる。
これを「三世因果(さんぜいんが)」とも「因果倶時(いんがぐじ)」ともいいます。
三世因果とは、過去、現在、未来を三世(さんぜ)といい、それぞれ因果関係で結びついているということです。
因果倶時とは、現在には、過去に対する果と未来に対する因が、倶に(ともに)あるということです。
実は「因果倶時(いんがぐじ)」は、ドトールコーヒーの鳥羽名誉会長の座右の銘として有名です。
私が座右の銘にしている言葉に、「因果倶時」というものがある。
「原因と結果というものは必ず一致するものだ」と釈迦が説いた言葉だ。
現在の「果」を知らんと欲すれば、つまり、現在の自分がどういう位置にあるかを知りたいと思うなら、過去の原因を見てごらんなさいということだ。
原因を積み重ねてきた結果として今日がある。原因と結果は一致している。
そして、未来の「果」を知らんと欲すれば、つまり、将来自分はどうなるだろうかと知りたいのであれば、今日一日積んでいる原因を見れば分かる。
自分自身が毎日、未来の結果の原因を積んでいるということだ。
人生の真理をこれほど厳しく、鋭く突いている言葉はないと思う。
この言葉の意味を初めて知った時、
一日、一時間どころか、一分、一秒すらおろそかにはできないと、息の詰まるような思いがしたものだ。」
(『ドトールコーヒー「勝つか死ぬか」の創業記』)
過去のことをどれだけ考えても、タイムマシンはありませんから、過去に戻ることもできず、ああしておけばよかった、こうしておけばよかったと悔いてばかりいても、時薬の効き目はなかなか現れません。
また、これから先どうなるのかと未来のことを余り考えすぎても、「明日のことは明日になってみないとわからない」と言われるように、どうなるか、わからないことばかりです。
心が落ち込んでいる時に、未来のことを考えると、悲観的なことばかり、想像して、未来に希望がもてず、これもまた、時薬の効き目が現れにくくなります。
「時薬」が早めに効く心がけは、今に集中することです。
「三世因果(さんぜいんが)」「因果倶時(いんがぐじ)」は、過去も未来も、現在に収まるから、現在、今が大事、今に集中しましょうと言われている言葉です。
まとめ
今に集中して、過去や未来を忘れることにより、時薬が早めに効いてくるようになります。
それから、過去のことを振り返ったり、未来のことを考えたりすればよいのではないでしょうか。
「三世因果(さんぜいんが)」「因果倶時(いんがぐじ)」のもとになっているのが、仏教の基礎である「因果の道理(いんがのどうり)」です。
因果の道理を知りますと、より「三世因果」「因果倶時」が理解できて、時薬が効きやすくなるでしょう。
(関連)
→ 因果の道理(因果応報)とは?
あさだ よしあき
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