職場で暴言を吐いていませんか?仕事中の暴言は生産性低下の元!
こんにちは、暮らしを良くする研究家のこんぎつねです。
あなたは仕事中部下に対して暴言を吐くことはないでしょうか。
あるいは職場で誰かがを暴言を吐かれているのを聞くことはないでしょうか。
何を暴言と言うかは厳密に決まっているわけではないですが、
「おまえは給料泥棒だ!」
「おまえなんかいてもいなくても同じだな」
「やる気がないなら辞めちまえ!」
などは裁判の判例にある暴言です。
ここまで酷くなくても
「あいつは職場に遊びに来てるんだ!」
「こんなことも出来ないやつなんて辞めさせればいいんだ!」
「あのオヤジ、ふざけやがって!」
など、本人がいないところで言ったり、誰かが言っているのを聞くことはないでしょうか。
怒って暴言を吐けば失敗が減り、仕事の効率化ができて生産性が上がるならば、大いに暴言を吐いていればいいのですが、実際は暴言が飛び交う職場では生産性が落ちるようです。
アメリカのジョージタウン大学マクダナー経営大学院の教授であるクリスティーン・ポラス氏がアメリカの有名な新聞であるウォール・ストリート・ジャーナルに寄稿したCivility at Work Helps Everyone Get Ahead(仕事での礼儀正しさは職場を向上させる)の記事内容を紹介します。
この中でクリスティーン氏は、非礼な行為を見聞きしただけで生産性が下がることを指摘しています。
暴言は生産性を下げる
あなたは職場で自分に敬意が払われず、ぞんざいに扱われていると感じるとどう思うでしょうか。
おそらくやる気がなくなり、仕事以外のことを考えたり、仕事を避けたりするでしょう。
そんなときはお客さんに対してもイライラした状態で接したり、部下にキツく当たったりしてしまいます。
クリスティーン氏とフロリダ大学のアミール・エレズ教授が行った実験では、まず実験に協力してくれる参加者を2つのグループに分け、実験の主催者側が参加者の片方のグループをけなしました。
その後、単語のつづりを入れ替えるパズルゲームをさせたところ、けなされた参加者はけなされなかった参加者よりも成績が33%悪くなりました。
また、れんがの使い方についてのアイデアを出し合わせたところ、けなされた参加者たちが思いついたアイデアの数は、けなされなかった参加者のアイデアの数よりも39%少なくなりました。
次の実験では参加者をけなすどころでなく、主催者側の教授(に扮した人)のやることを邪魔したと参加者に因縁を付けて暴言を吐きました。
すると暴言を吐かれたグループの成績は暴言を吐かれなかったグループに比べて、単語パズルの成績は61%悪く、れんがのアイデアの数は58%少なくなりました。
暴言は見聞きするだけで害悪
今度は参加者自体に暴言を吐くのではなく、他人が暴言を吐かれているのを見聞きさせました。
その結果、暴言を見聞きした人の単語パズルの成績は、見聞きしなかった人に比べて25%悪く、れんがのアイデアの数は45%少なくなりました。
また暴言を見聞きした人たちはそうでない人たちに比べて、追加実験を行いたいと言っても手伝おうとする確率が低くなりました。
暴言は言われた本人だけでなく、それを聞いている周りの人にも悪影響を及ぼすことが分かります。
礼儀正しさと生産性
これと別の実験で上とは逆に礼儀正しさ(ここで言う「礼儀正しい」とは相手に敬意を払い、落ち着いて丁寧に、機嫌よく接すること)が職場に及ぼす生産性を調べました。
すると、礼儀正しい態度を取るリーダーに対しては、その人に仕事のアドバイスを求める確率が高くなり、リーダーだと認める確率が2倍高くなりました。
また礼儀正しい人と評価されている人の生産性は、そうでない人よりも13%良いという結果も出ています。
礼儀正しさが生産性を上げる理由をクリスティーン氏は「心理的安心感」が高まるからだと言っています。
グーグルが行った研究、プロジェクト・アリストテレスによると、心理的な安心感のあるチームのメンバーは、チームメイトのアイデアを利用する確率が高く、そのようなチームの生み出す売上も多くなり、幹部から「効率的」だと評価される頻度が、そうでないチームに比べて2倍高くなるそうです。
(プロジェクト・アリストテレスについてはこちらの記事をお読みください。
職場で仮面を被っていませんか?|生産性を高める「心理的安全性」とは)
暴言を吐きたくなったら…?
しかし仕事は上手くいかないことも多いです。
同僚や部下の失敗に対して暴言を吐きたくなったらどうすればいいのでしょう。
スタンフォード大学の脳神経外科医ジェームズ・ドーティ博士は部下に対して腹を立てたときの対処についてこちらの記事の中で3段階の対処法を紹介しています。
1.少し時間を取って冷静になる
腹を立てたまま感情にまかせると正しい対処ができなくなってしまいます。
少し時間を取ることで冷静になり、より合理的で正しい行動を取ることができるようになります。
2.部下の立場に自分を置いてみる
相手の立場に自分を置いてみることで、それまで気付かなかったことに気付くことができ、相手に共感します。
人は権力を持つと共感力を失う傾向にあります。
部下の視点に立って状況を見る訓練をすることが重要です。
3.許す
共感すれば寛容になります。
部下に対して寛容になれば部下の忠誠心が高まり、また自分自身にもいい影響があります。
腹が立ち、憎しみが残ると血圧と心拍数がともに上昇しますが、許すことで自分も相手も血圧が下がります。
また寛容な人はストレスやネガティブな感情が減り、幸福度と人生への満度が高まります。
腹が立ったら少し時間を置き、自分が相手だったらどうしただろうと考えてみましょう。
「確かにこの指示ではこう誤解するかもしれないな」
「彼の立場ならこれ以上はできなくて仕方ないか」
などと寛容になれるかもしれません。
瞋恚(しんに)
仏教では怒りの心を瞋恚(しんに)と言い、欲の心が妨げられたときに出てくる心だと教えられます。
その怒りの心が口に出ると悪口になります。
悪口のことは仏教で、字は同じで「悪口(あっこう)」と読みます。
「悪口」は仏教で教えられる十の悪い行いである「十悪(じゅうあく)」のうちの1つです。
「悪い行いは悪い結果を引き起こす」と教えるのが仏教ですが、今回の研究に当てはめると、暴言を吐くことでチームの生産性が悪くなり、良いアイデアが浮かばなくなり、成績が落ちて、最終的に自分が苦しむことになります。
「智慧(ちえ)ある者に怒りなし」とはお釈迦さまの言葉ですが、怒りの心が出ても外に表さないようにしたいところです。
まとめ
暴言は言われた相手はもちろん、それを周りで聞いている人にも悪影響を及ぼします。
暴言を聞くと頭の回転が鈍り、アイデアが出にくくなることが研究でわかっています。
そのため腹が立ったときにはそれを口にだすのではなく、少し時間を取って冷静になり、相手の立場に自分を置いて考え、共感して許すことが周りにとっても自分にとっても良いことです。
私も「悪口(あっこう)は言った本人に悪い結果が返ってくるから止めなさい」と教えられたお釈迦さまに従いたいと思います。
暴言を言われてイライラしない人はいません。
しかしその怒りをコントロールできなければ不幸になるのは自分です。
怒りのコントロール法はこちらの記事で紹介しています。
→怒りは心疾患の元!心理学による怒りの正しいコントロール法とは?
こんぎつね
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