任せたいけど任せられない人へ 「任せる相手」は誰がよいのか(4)
『いつも忙しそうにしている割に、あまり成果が出せていない人』
『いつも余裕があるのに、多くの仕事をこなし、成果をバンバン出している人』
その違いは、どこにあるのでしょう。
いろいろな要因があると思いますが、仕事は一人でしているのではなく、チームで行っていますので、
「どれだけ自分の周囲の人の力を生かせているか」
これが大きな要因として考えられます。
これを 『 任せる力 』と呼びたいと思います。
他人に任せることは、簡単なように見えて、実は難しいのです。
失敗すると、かえって自分を忙しくさせることにもなりますので、任せたいけど、任せられず、結局、他人に任せずに、自分でそのままやってしまう人も少なくありません。
この『 任せる力 』を身につけるには、「 技術 」だけでなく「 メンタル 」も非常に大事になります。
「 技術 」だけなら短期間に身につくのでしょうが、「 メンタル 」もありますので、身につけるのが難しいのです。
『 任せる力 』を身につけるには、「 メンタル 」と「 技術 」の両方が必要です。
1章 「メンタル」
2章 「何を任せるか」「任せる目的」
3章 「任せる相手」
4章 「任せる技術」(自分の仕事を整理整頓する)
5章 「任せる技術」(引継の方法)
この順番で説明していきたいと思います。
3章「任せる相手」を説明しています。
自利利他の心がけで「まだ任せられないではなく、任せるから任せられるようになる」と思い、任せようという気持ちになりました。
何を任せるかも、整理できました。
では、誰に任せればよいのか。
どんな人にでも、任せてよいのではありません。
任せる相手を間違えますと、後から、しばらくして、また、自分が受け持つようになる、「リバウンド」状態になるだけです。
では、どんな相手に任せればよいのでしょうか。
仕事内容によって、適材適所、能力、経験等が関係するのは、もちろんですが、その前の段階で、考えてみたいと思います。
目次
任せる相手
「任せる相手」とは、別の言葉でいえば「信頼できる相手」と言えましょう。
どんな人が信頼できるでしょうか。
2つの面を挙げたいと思います。
1.約束を守る人
2.責任感のある人
「責任感のある人」とは、「他者のせいにせず、自分に責任を持つ人」として説明したいと思います。
他者のせいにせず、自分に責任を持つには、外に向いた目を、内に向かせる、愚かな思考回路を賢い思考回路に変えることが大事です。
それを体系的に説明しているのが、仏教の「因果の法則」でした。
「我利我利」ではなく「自利利他」へ
「まだ任せられないではなく、任せるから任せられるようになる」
その為には、任せる側が「我利我利」ではなく「自利利他」になりましょうと説明しました。
この「我利我利」「自利利他」も、因果の法則と関係があります。
因果の法則に則れば、「我利我利」から「自利利他」を心掛けるようになります。
「善因善果」
利他、他人を幸せにする、他人を喜ばせる、これはよい行いです。
よい行いをすれば、よい結果が自分にかえってくる。
利他のままが自利になるということです。
「悪因悪果」
我利我利、他人はどうなってもいい、自分さえよければよい、
これは悪い行いです。
悪い行いをすれば、悪い結果が自分にかえってくる。
「我利我利」と「自利利他」を教えた例え話
こんな例え話で、昔から説明されているそうです。
もの好きな男が、ひとつ地獄を見にゆこうと、ノコノコ出かけた。
たまたま地獄は昼食時で、食卓の両側に亡者共が、ずらりと並んでいる。
地獄のことだから、どうせロクなものを喰べてはいないだろうと、テーブルの上を見ると、豈はからんや山海の珍味の山である。
にもかかわらず、亡者共は、骨と皮にヤセ衰えている。
「おかしいなぁ」とよくよく見ると、一様に一メートル以上もある長い箸を持っている。これでは、いくら美味しい御馳走が目前にあっても、自分の口へは入れられない。ついで男は、極楽へ行ってみることにした。
丁度、夕食時で、テーブルの両側には、仲良く極楽の往生人達が坐っていた。
無論、御馳走は、山海の珍味である。
さすがにみんな、丸々と肥えているなぁと思いながら、ふと箸に目をやると、何とその箸も地獄と同じように、1メートル以上もあるではないか。
一体、地獄と極楽とは、どこが違うのかと、小首をかしげて喰べ始めるところを見ていた。
すると、挟んだ御馳走を自分が食べないで、お互いに向こう側の人に喰べさせているではないか。「なるほど、極楽へ行っている人の心がけが違うわい」と、横手を打って感心した。
自分されよければ、他人はどうなってもよいという我利我利は、幸せになれず、他人の幸せのままが自分も幸せになる自利利他を、わかりやすく教えられたものです。
成功している経営者のマインドは「自利利他」
ファスナーで有名なYKK。
YKK精神は「善の巡環」で、創業者の吉田忠雄氏の言葉です。
「善の種をまいて、善を尽くしていけば、必ず善はむくわれていく。
奪うことではなく与える。与えることによって、善は限りなく巡る。」
多くの経営者が影響を受けた話として、有名な丸い湯船の例え話があります。
丸い風呂につかっている。
風呂のお湯を、しきりと手前へかき寄せると一時は自分へお湯が寄ってくるが、すぐに脇をすり抜けて向こう側へ流れていってしまう。
逆に、お湯を向こう側へ押しやるとお湯は向こうへ行くように見えるが、やがて、ぐるりと巡り巡って自分へ返ってくる。
「我利我利」と「自利利他」を、例えている話です。
「因果の法則」を学ぶと「自利利他」になる
「因果の法則」を学ぶと、
任せる側は、「我利我利」から「自利利他」へと変わります。
任せられる側は、「他者のせいにせず、自分に責任を持つ人」に成長し、任せてもらえるようになります。
任せたいのに、任せることができない状況を解決する一歩を踏み出せるようになります。
気を付けるところ
「他者のせいにせず、自分に責任を持つ人」
ここで気を付けねばならないことがあります。
・決して、自分が悪いと思い込むのとは違います。
思い込むのではなく、事実を受け入れるということです。
・自分全部が悪いと全否定するのではなく、悪いところを見つけて、改めていくということです。
改めていく、成長が目的なので、責任追及ではなく、原因追究をしていくのです。
まとめ
「因果の法則」を学ぶと、
任せる側は、「我利我利」から「自利利他」へと変わります。
任せられる側は、「他者のせいにせず、自分に責任を持つ人」に成長し、任せてもらえるようになります。
任せる力の本質は「我利我利」から「自利利他」に変わるところにあります。
任せる側も任せられる側も「因果の法則」を学んでみましょう。
あさだ よしあき
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