人生100年時代の人生戦略|『LIFE SHIFT』と仏教の視点で考えてみた
こんにちは。みさきです。
厚生労働省が発表した令和4年簡易生命表によると、75歳まで生きる割合は男性75.3%、女性87.9%、90歳までの割合は男性25.5%、女性49.8%となっています。
また、男性の平均寿命は81.05歳、女性の平均寿命は87.09歳とされています。
(参照)厚生労働省 令和4年簡易生命表
「人生100年時代」と呼ばれるようになり、医学の進歩により、飛躍的に長生きできるようになりました。これは幸せなことです。
…と、一応は言ってみましたが、実際はどうなのでしょうか?
これから始まる100年時代は、本当に幸せなものと言えるのでしょうか。
もしかしたら不幸せなのかもしれません。
「寿命」「長寿」という言葉には「寿(ことぶき)」が含まれており、長生きすることは幸福の条件だと人類は信じてきましたが、最近ではその価値観も揺らいできています。
金銭面の不安、長期化する闘病、介護の苦痛など、長生きに伴う新たな不安が生まれてきているからです。
専門家の中には「長生きが不幸の種となる」と指摘する人もいます。
病気で死ぬか、お金が底をついて死ぬか…。
今回は「生きているだけの難民」にならないために考えてみたいと思います。
人生100年時代を生きるダンドリとは
2017年にビジネス書読者グランプリに選ばれた『LIFE SHIFT 100年時代の人生戦略』は、なかなか恐ろしい本でした。
この本では現在、70代・40代・20代の3人を例に老後の貯蓄のシミュレーションをしていますが、これが非常にリアルで、自分の人生が大丈夫かどうか心配になる内容でした。
実際には、個人によって年収や家族構成、ライフスタイルなどが異なるため、大まかなイメージとして書かれていますが、私が読んで感じたのは、現在70代の人の老後はこれからの世代と比べて非常に恵まれているということです。
つまり、現在老後を送っている人をモデルに自分の老後の人生設計をしている人がいれば、それはやめた方が良いということです。
今の社会と未来の社会では全く異なるのです。
私の場合、このシミュレーションによると、毎年所得の17.2%を貯金する必要があり、年収を平均の約400万円とすると、老後資金のために毎月約5万5000円の貯金が必要という試算になります。老後の生活資金を最終所得の50%とするのはかなり質素な生活ですから、余暇を楽しむためにはさらに蓄えが必要になります。「これはまずい…」と思いながら読みました。
しかし、私の世代よりもさらに深刻なのが、現在の20代です。彼らは個人の蓄えが毎年所得の約31%必要という試算でした。
「今を生きる」という人生観の見落としているもの
「今の幸せが大事」「今を生きよう」「今しかできないことがある」と言う人は多くいます。
一度きりの人生で、しかも有限でいつ終わるか分からない命だからこそ「今を大切に」というメッセージは理解できます。
しかし、一時的に今が幸せであっても、長い老後が不幸せであれば、過去の自分を否定し続け、後悔することになりかねません。
『LIFE SHIFT』には、興味深い実験が紹介されていました。
CGを使って被験者が年齢を重ねたときの未来の顔を見せ、その後、1000ドルのお金が入ってきたと想像させ、4つの使い道を示し、何を選ぶかを問うという実験です。
●大切な人のためにプレゼントを買う
●引退後に備えて定期預金に貯金する
●そのお金で贅沢で楽しい時間を過ごす
●とりあえず普通預金に預ける
未来の老いた顔を見せられた被験者は、見せられなかった人と比べて引退後のための貯金額が2倍以上多かったという結果でした。
この実験から分かるのは「未来の自分を想像すること」の大切さです。
長い老後を想像すると、今の自分がどうあるべきかをよく考えて行動するようになります。
仏教にはこんな言葉があります。
未来の果を知らんと欲すれば、現在の因を見よ
(未来の運命を知りたければ、現在の行動を見なさい)
未来を老後に置き換えてこの言葉を読むと「老後がどうなるか知りたければ、今何をしているかを見なさい」とお釈迦さまが言われていることになります。
『LIFE SHIFT』は、未来の老後の現実を知り、現在何をすべきかを考えるよう警鐘を鳴らしている本です。
著者はセルフコントロールし、時間の質を上げ、資産を形成することを勧めています。
しかし仏教では『LIFE SHIFT』が問題にする「老後」以上に問題にしなければならない未来があります。それは「死」です。
人生100年とはいえ、死ななくなったわけではありません。
100年生きられない人がいる一方で、死なない人はいません。
確実な未来は「死」であり、これはすべての人にとって避けられない現実です。
ブッダは「死」を見つめることの重要性を説き、これを「生死の一大事」と呼びました。仏教はこの「生死の一大事」を解決し、真の安心と満足を得る方法を説いています。
「死」を真剣に見つめることによって、人生の時間の質と重さは全く変わります。
死を見つめることは暗く沈むことではなく、真に幸せな人生を築くために大切なことなのです。
みさき
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