充実感がなく虚しい毎日。でも、その虚しさが幸せな人生のスタートなら?
こんにちは。”伝わる”技術研究家のみさきです。
人生の成功者と呼べる男女の心の葛藤を描いた話題のドラマが、新垣結衣さん×松田龍平さん主演の『獣になれない私たち』
新垣結衣さん演じる主人公は、仕事は完璧で、恋人もいて、誰にでも笑顔で接し、好かれ愛される女性です。
こんな人は、きっと人生が充実していて幸せだろうなと周りは羨みますが、彼女はやり場のない寂しさを抱えています。
彼女だけでなく、勝ち組と呼ばれる人たちの心をも埋め尽くすむなしさがすごくリアルに描かれているドラマだと思いました。
今回は、充実した日常に押し寄せてくる「むなしさ」とは何か、考えてみたいと思います。
充実したはずの人生。なぜかむなしい
「私はなんのために頑張っているんだっけ?」
「何もしたくない、何をしたってむなしい」
「何をするべきか、自分でもわからない」
と、ふと思ったことはないでしょうか。
少し前にネット上で、人生相談の掲示板だったと思いますが、こんな声がありました。
40代の主婦です。大学生と高校生の子供がいます。
子育てにも余裕ができ、日々いろんなことをしていますが、今ひとつ満足感や充実感、喜びなどを感じられないのです。
これといった特別な趣味はないのですが、なにかをしたい気持ちだけはあり、たとえば旅行、スポーツジム、ライブに行ったり、買い物に行ったりとそれなりにいろいろしています。
でもこれらのことは、本当に自分がしたいことなのかわからないのです。
なぜなら、旅行に行っても多少は楽しめても心の底から楽しいわけでもなく、ランチに行ってもあまり美味しいと感じたりもしないのです。
私は自分が本当にしたいことがわからないのです。
すべてに冷めているというか……
こんな私はわがままな人間でしょうか?
これだけいろんなことをして、またできる環境にいて、こんな気持ちになるということはなぜでしょうか?
自分でもわからないのです。
この投稿に「ぜいたくな悩みだ」と言う人もあるかもしれません。
仕事や家事・子育て・趣味などに忙しく充実しているのに、何を悩むことがあるのか、と思うからでしょう。
しかし一方で、この投稿に共感する声も相当多いようです。
コメント欄には「私も同じです」とか「自分もやりたいことが分かりません」などの声で埋め尽くされていました。
相当多くの人が子育て、旅行やスポーツなどの趣味、順調な仕事など、充実しているはずなのに、心の底から楽しめるものはなく、自分が本当にしたいことが分からず、むなしい気持ちを抱えているようです。
充実しているはずの人生に、むなしさが蔓延するのはなぜなのでしょうか?
むなしさの正体とは何か
20世紀最高の哲学者の一人、ハイデガーは、3段階に分けて「むなしさ」とは何かを説明しています。
中でもハイデガーが最も注目したのは、『人間存在そのもののむなしさ』です。
『人間存在そのもののむなしさ』とは「何のために苦労してまで頑張るのか」「自分は生きて何をすべきか」が分からず、自分のやっていることが意味のないことのように思え、むなしくなる心です。
このむなしさは「それは何時来るか分からないが、いつもある」心であり、人生がうまくいっていても、充実していても、ふと忍び寄るむなしさだと解説しています。
2600年前、インドのシッダルタ太子(後のお釈迦様)も、『人間存在そのもののむなしさ』に悩んだ方でした。
太子は物心つく頃には、あまりの聡明さに、インド一の学者や武芸の達人が自信を喪失するほどであったといわれます。
お金や財産は王族ですから不自由なく、才能は並ぶ者がなく、地位、名声は保証され、妻子にも恵まれ、誰もが羨しがる立場でした。
しかしシッダルタ太子は成長されるにつれ、物思いにふけられるようになり、20代はずっと生きる意味がわからないむなしい心に非常に悩まれたのです。
ついにそのむなしい心をどうしようもできなくなり、真の生きる意味は何かを求めて、すべてを捨てて城を出られ、山奥深く入られたのは29歳の時でした。
今回はハイデガーやお釈迦様を通して『人間存在そのもののむなしさ』とは何か、お話ししました。
充実しているはずの日常に、むなしさが押し寄せてくるのは、自己の存在意義に向き合おうとしている姿なのです。
「私の存在意義とは何か」という問いが心にひっかかったところから本当の幸せな人生が始まると、考えさせられたエピソードがあります。つづきはこちらをご覧ください。
→親鸞聖人関東布教・日野左衛門の済度~「どう生きる」と「なぜ生きる」
みさき
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