子供を亡くした悲しみを抱える親にかける言葉|安易な慰めは逆効果
こんにちは。こころの悩みサポーターのこうへいです。
私は仏教の講演会に参加することが休みの日の楽しみになっています。
仏教を聞きたい、仏教について知りたいと思われて講演会に参加される方の中には、大切な人を亡くされた悲しみをきっかけとして仏教に関心を持ったと言われる方があります。
先日も「子供を亡くした悲しみをきっかけに仏教を聞いてみたいと思った」という方に出会いました。
自分よりも先に子供を亡くすというのはとても受け入れがたい現実であり、その悲しみは余人には想像できない深い悲しみでしょう。
目次
子供を亡くす悲劇は避けられない
とんちで有名な一休さんにこんな話があります。
ある人が一休さんに「家の宝にしますんで、この色紙に一言めでたい言葉を書いてください」と依頼をしました。
快く引き受けた一休さんは渡された色紙に、
“親死に 子死に 孫が死に”
と書いて依頼主に渡しました。
渡された色紙を見た依頼主は驚いて「これのどこがめでたい言葉なんですか!」と怒りました。
すると一休さんは「親が死んでから、子供が死に、それから孫が死ぬ。順番に死ねたらこれほどめでたいことはないよのう」と答えたと言われます。
親が死んでから子供が死ぬということがめでたいことだと一休さんが言ったのは、そうでないことがあるからでしょう。
仏教の言葉に「老少不定(ろうしょうふじょう)」という言葉があります。
年老いた人が先に死んで、若い人が後から死ぬとは定まって(決まって)いないということです。
悲しいことですが、親よりも先に子供を亡くすという悲劇はなくすことができません。
子供を亡くした悲しみを抱える人にどう言葉をかけ、どう向き合っていったらいいのかということは誰もが直面しうる問題ではないでしょうか。
子供を亡くした悲しみを持つ方を怒らせた無配慮
1年以上前のことですが、講演会の会場で子供を亡くした悲しみを抱える男性と出会いました。
その男性は私に数年前に子供を亡くしたこと、そしてその悲しみが今も変わらないことを語ってくれました。
私はその男性になんとか元気になってもらいたいと思って、
「○○さんのお気持ち分かりますよ。お子さんを亡くされたその悲しみも乗り越えられますよ」
と言葉をかけました。
するとその方はきつい口調で「あなたには分かりませんよ!」と言われ、気分を害してしまいました。
その男性と別れた後、一緒に仏教を学んでいる先輩に相談してみました。
その先輩はご主人を亡くされたことをきっかけに仏教を学ばれるようになった人でした。
安易な「分かる」逆効果
先輩は次のようにアドバイスをしてくれました。
「大切な人、特に子供を亡くした悲しみは深く重いものなので、安易に『分かる』と言われても、『分かるわけないでしょ』と思うでしょうね」
相手の気持ちを分かってあげたい、気持ちを理解できれば相手も少しは心が軽くなるだろうという思いは、悲しみを抱える人に接した人ならば、誰もが持つ感情でしょう。
ところが、それをそのまま「分かる」というと逆効果なことが多いようです。
慰め言葉を望まない人もある
さらに先輩はこう教えてくれました。
「その方は『乗り越えられる』という言葉を『子供のことを忘れる』ことや『悲しみがなくなる』ことだと思われたのかもしれないね」
人によって「乗り越えられる」「癒える」といった慰める言葉を聞くと、「この悲しみがなくなって、子供のことも忘れてしまうということか」と思われる人もあるようです。
大切な子供のことを、亡くなったからといって、忘れることはできないと感じる人は多いのでしょう。
悲しみのタネになると分かっていても、忘れられないし忘れたくないとさえ思うのが、親心のようです。
「あなたのことを思ってます」の気持ちを伝える
子供を亡くし悲しみ苦しんでいる人を見たならば、何とかその苦しみを軽くしてあげたいと誰もが思います。
苦しみを和らげるために大切な心がけの一つが相手の話をよく聞くことであり、そして、相手の苦しみにフォーカスして共感することだと言われます。
「○○があって悲しかった」という話を聞いたら、「○○があって悲しかったですね」と反復します。
「××が嫌だった」という話を聞いたら、「××が嫌だったんですね」と反復します。
これを続けることで、相手は自分の気持ちを分かろうとしてくれているのだと感じるのです。
私たちはみんな生まれた所も違えば、何を見て、何を聞いたかも一人一人異なります。
だから相手の気持ちを全く同じように分かることはできません。
たとえ双子でも、同じ日に同じ親の元で似通った容姿で生まれたとはいえ、その後の人生はそれぞれ違う道を歩みますからお互いの気持ちをまったく同じようには理解できません。
相手の気持ちをすべて理解することはできなくても、「分かってあげたいと思っている」というこちらの思いが伝われば、相手はどれだけ心が軽くなるか知れません。
「あなたのことを想っています」の気持ちを相手に伝えることが何よりも大切なことでしょう。
まとめ
生まれてきたら必ず死んでいかねばなりません。
そしていつ死ぬかは分かりません。
私たちの考えや予定と関係ないのが、死というものです。
ですから、子供を亡くす悲劇は人類が続く限りなくなりません。
子供を亡くした悲しみを抱える人にどう接したらいいのでしょうか。
人によって違いますから、すべての人に当てはまるものではありませんが、私の出会った男性と同じように感じる人もありますので、以下の点も心に留めていただければと思います。
・安易な「分かる」は逆効果になることもある
・慰めの言葉を望まない人もある
子供を亡くし悲しみ苦しんでいる人を見たならば、何とかその苦しみを軽くしてあげたいと誰もが思います。
それには「あなたのことを想っています」の気持ちを相手に伝えることが何よりも大切なことのようです。
(関連記事)
→子供を亡くした悲しみを抱える人にお釈迦様のなされた処方とは
こうへい
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