本当の「終わり良ければ全てよし」を迎えるにはどうすればよいか
わかりやすく仏教を伝える専門家、あさだです。
今回は「終わり良ければ全てよし」を深堀りしてみたいと思います。
目次
「初頭効果」「終末効果」と「ピークエンドの法則」
「初頭効果」「終末効果」
心理学では、物事の最初の部分が記憶に残りやすいことを「初頭効果」と言われます。
逆に、終わりの部分が記憶に残りやすいことを「終末効果」と言います。
この「初頭効果」「終末効果」で考えると「終わり良ければ全てよし」は「終末効果」といえます。
「ピークエンドの法則」
2002年にノーベル経済学賞を受賞した行動経済学者のダニエル・カーネマンが提唱した心理法則があります。
それが「ピークエンドの法則」です。
過去の出来事の記憶や印象は、ピーク(絶頂)とエンド(終局)の状態がどうであったかによって決定づけられるというものです。
そして「ピークエンドの法則」でも「エンド」が大事といっています。
「去り際が肝心」
異動や退職するときに、残っている皆さんに対して、どんなメッセージを発するかによって、その人がどんな人だったか、評価が決まる可能性があります。
それまで、どれだけ会社に尽くし、周囲を手助けしてきた人であっても、
最後の挨拶で、
「この会社は駄目な会社だ、やがて潰れるでしょう。ここの社員も残念な人ばかりだった」
と、悪口を言って去っていったら、どうなるでしょうか。
「終わり」をよいものにするという考え方は、私たちが思っている以上に大事だといえます。
私たちは時の旅人
人生はよく旅に例えられます。
私たちは昨日から今日、今日から明日へ、時の旅をしています。じっとしておれません。
昔の旅は、歩き旅で、山あり谷ありの道を歩いていました。晴れの日もあれば雨の日もあります。そのように、人生も、調子のよいときもあれば、悪いときもある。そんな山あり谷ありの人生を、一生懸命、歩んでいるのが、私たちだといえます。
勉強や仕事をしていれば、成功もあれば失敗もあります。合格することもあれば不合格の時もある。仕事が順調な時もあれば、失敗の連続の時もある。思い通りにならないこともある中、決して平たんな道ではなく、デコボコ道をなんとかなんとか旅をしていると感じている方も少なくないと思います。
「人間万事塞翁が馬」と「過去の再定義」
「人間万事塞翁が馬」という故事成語があります。
幸せが不幸に、不幸が幸せにいつ転じるかわからないのだから、安易に喜んだり悲しんだりするべきではないということです。
決してデコボコ道を旅をしていても、不幸ばかりではありません。
「自分が大きく成長できたのはどんな時ですか?」
この問いを、会社のリーダーに投げかけると、仕事での修羅場体験をあげる人が多いのは、よく知られた事実です。
- プロジェクトが難航して頓挫した
- 社運を左右する仕事を任されたのに失敗した
- 望まぬ部署に異動させられた
- 周囲の信頼を失った
- 大事な顧客から叱責された
- 仕事に追い立てられているうちに家庭不和になった
そんな時、「こんなに頑張っているのにどうしてわかってもらえないんだ」「どうして自分だけこんな目にあわなければならないのか」と怒りに打ち震え、あいつのせいだ、こいつのせいだ、他人や環境を恨んだり憎んだりすることもあります。
しかし、そこを誠実に一つ一つ真面目に取り組むことによって、「雨降って地固まる」のことわざにもありますように、しばらく時がたってみると、「あの時、一番成長できた」「今ではいい思い出です」と印象が変わります。
ネガティブな出来事をポジティブな意味に置き換えていくことを心理学では「過去の再定義」といいます。
たとえ「今は最悪だ」と思っていても、その後によって再定義される可能性を常に秘めているということです。
「終わり良ければ全てよし」
この言葉は、うまくいかなかったときに慰める言葉ではなく、どんな時にも、「これからの人生に」「自分の未来に」希望を見出すように背中を押してくれる知恵の言葉です。
本当の「終わり良ければ全てよし」を迎えるにはどうすればよいか
人生の終わりは「死」であることは、誰も否定することはできません。
「死」が絶望であれば、「終わり良ければ全てよし」とはなりません。
「死」を真面目に見つめ、絶望ではなく、希望を与えるのが仏教です。
仏教を説かれたお釈迦様は、老いや病、死がやってきても崩れぬ、本当の幸せになれる道を教えていかれました。
仏教を学ばれて、本当「終わり良ければ全てよし」を迎えていただきたいと思います。
→ お釈迦様物語 私にとって本当に大切なものは何か気づかせる三人の妻の話
あさだ よしあき
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