思春期の子供を叱るとき怒鳴るのはいいの?|怒鳴って叱る悪影響

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こんにちは、暮らしを良くする研究家のこんぎつねです。

あなたは子供を叱るときに怒鳴ることはよくあるでしょうか。

多くの教育心理学者は「怒鳴ることは子どもの教育にとって何の意味もない」と言っています。

私の叔母は甥が小学~高校生のころよく怒鳴っており、甥を心配した祖母とケンカになることもしばしばあったと母から聞きました。
今はその甥も医者を目指して大学で勉強中なのでいいのですが、怒鳴ることは子供のためには良くないという研究は多いです。

Parents’ Harsh Words Might Make Teen Behaviors Worse(親の厳しい言葉は子供の行動を悪化させる可能性がある)

Parents: Yelling and swearing at teens can backfire(怒鳴ったり罵倒することは10代の子供には逆効果になる)

子供を怒鳴って育てることは子供にどのような影響を与えるのでしょうか。

子供を怒鳴ることの悪影響

言っても聞かない子供に、最終手段として怒鳴ることがあると思います。
しかし、その厳しい言葉が裏目に出ることがあります。
10代の若者は怒鳴られると行動が悪化していく、という調査結果が出ています。

どんなに怒鳴っても、あなたの子供は言うことを聞きません」とピッツバーグ大学で心理学と教育の准教授を務めるワン・ミンテ氏は言っています。
ワン准教授はペンシルベニア州フィラデルフィア地区の13歳の子供を持つ両親に、過去1年間に何かのミスをした子供がくだらない言い訳をしたとき、怒鳴ったり悪口を言ったかを尋ねました。

すると967人の親のうち、母親は45%、父親は42%が子供に厳しく怒鳴っていました。

厳しく怒鳴ったことがあると答えた親に1年後再び連絡をしたところ、子どもがキレる、攻撃的になる、破壊行為や不正行為をするなどの問題行動を起こす回数が増え、またうつ病の症状が出る割合が高くなっていました。

ワン・ミンテ氏は、
あなたが怒鳴ってもあなたの子供は聞いていませんし、事態を悪化させて親子関係をより悪くさせます
この結果は、私たちがもう少し落ち着いて行動する必要があることを私たちに教えるものです。
怒鳴ることは問題行動を止めるのに役立ちません。親は少し落ち着く必要があります」
と言います。

イェール大学で心理学・児童精神医学を教えるアラン・カズディン教授はこう言っています。
「厳しいしつけは育児の一部であり、その行為だけを育児から切り離すのは難しいでしょう。
親は子供の前で理性を失ったからといって慌てなくていいのです。誰もが何かのはずみで理性が外れることはあるのですから。
怒鳴ったり体罰をしても、子供に行動を改善させる効果はありません
私のように児童の研究をしている人たちは、怒鳴っても子供の行動は変わらないため、怒鳴ることに反対しています。
怒鳴ることが少なくなれば、家庭ストレスが軽減され、暴力や体罰が少なくなります。
その代わりに、育児、家族の活動と日常生活に集中すべきです。
研究者たちは、怒鳴ったり、がみがみ小言を言ったり、叩いたりしても、子供が生きていくための強さを身に付ける手助けにはならないことを知っています。
10代の若者は自分の両親を見て、より適切な行動を学ぶことで人生をもっと幸せにすることができるのです。
毒になる行動はしないほうがいいでしょう。
それは心身の健康に現れます。
子供の行いを受け入れ、教育し、愛し、抱き合ってほしいのです」

ワシントンD.C.の児童心理学者ネイル・ベルンスタインは、厳しく叱ることが子供の混乱と反抗を助長すると主張しています。
「親が正しい理由で怒って怒鳴ることがあります。
たとえば、10代の子供が酔っ払い運転などの危ないことをしたら
『何やってるんだ!?おまえ死ぬぞ!』
と怒鳴るかもしれません。
しかし何かあるたびにこのように怒鳴る親が多いのです。
また、叩く必要もありません。
特に10代の若者を叩くことは教育に効果がないことが知られており、問題が起こっていることを軽減するよりも、さらなる問題を引き起こす可能性が非常に高くなります

どう教育すればいいのか

では、10代の子供を育てるときにはどうすればいいのでしょうか?

ベルンスタイン氏は、
「より良い考え方は建設的な結果を使うことであり、屈辱的なものではなく教育的なものです。
3つの大事なことは良いコミュニケーションを取り、愛情を与え、取り決めを作ることです。これらの3つを一貫して練習すれば、幸せで健康な子供を育てられます。
目標は、あなたがしてほしい行動を子供に教えることです。
怒鳴ったり罰を与えることは、現時点での行動を止めるだけで、あなたがしてほしい行動をさせる力はありません
と言っています。

カズディン教授は
「親がすべきことは、子供が正しいことをしたらその行動を褒めることです。
そうすれば、子供はあなたと正しくコミュニケーションを取って、問題行動が減るでしょう。
たとえば、子供がテーブルをセッティングしたり、兄弟姉妹と一緒に家事を手伝ったら『ありがとう。とても嬉しいよ』と褒めます。
子供を傷つけないようにしようと思って教育していると、問題行動が減ります。
子供たちを怒鳴ったり、傷つけていると問題行動が増えます

と言っています。

怒りの心を抑える方法

子供への教育は問題行動であっても受け入れ、正しい行動を教え、できたら褒めることだとベルンスタイン氏もカズディン教授も言っています。

仏教では怒りの心を瞋恚(しんい)と言い、その反対の耐え忍ぶことを忍辱(にんにく)と言います。
そして
怒りはあなたも周りも不幸にするから怒ってはいけませんよ。腹が立っても耐え忍べばあなたも周りも幸せになれますよ
と教えられます。
腹が立てば言ってはいけないことを言ってしまい、やってはいけないことをやってしまい、その報いで後で自分が損をします。
だから「怒るとあなたが不幸になるから耐えましょう」と言われるのです。

しかし、そうわかっていても腹が立つと怒鳴ってしまうことがあると思います。
もし腹が立ったらどうしたらいいのでしょうか。

自然科学研究機構・生理学研究所の柿木隆介教授は
「怒りの発生と理性の発動には時間的なズレがあります。前頭葉(ぜんとうよう:脳の中で理性の制御をする部位)が本格的に働きはじめるまでにかかる時間は3~5秒程度と考えられます」
と言っています。
つまりカッと腹が立ってから「ここで腹を立てるのは良くないぞ」と考えるのに3~5秒かかるのです。

そのため腹が立ったときは6秒、時間を置きましょう
具体的には息を吸って吐いてを3回繰り返したり、相手の意見のおかしなところを整理したり、今怒鳴っていい状況かを確認するために少し周囲を見渡すと6秒ほど経ちます。
この間に怒りの心はある程度収まります。

そして少し冷静になったところで子供を怒鳴ることの悪影響を考えれば、別の方法で言うことを聞かせようと思えるはずです。

まとめ

怒鳴ることや体罰は子供にとって悪影響を与えることが研究でわかっています。
教育で大事なことは正しい行動を褒めて良いコミュニケーションを取り、愛情を与え、取り決めを作ることです。
カッと腹が立ったら周りを眺めたり、相手の意見を整理して6秒耐えましょう。
そうすれば理性的に対応できます。

また腹を立てないようにするにはなるべく笑顔でいるといいでしょう。
ムスっとした表情でいると大したことのないことでも腹が立ってきます。
表情により感情が作られる「表情フィードバック仮説」についてこちらの記事で解説しています。
和顔愛語でみんな幸せ!(前)|笑顔のチカラを科学します

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こんぎつね

チューリップ企画デジタルコンテンツ事業部にてサポートとインターネット業務にも携わっているこんぎつねです。(こんぎつねの記事一覧へ)チューリップ企画に来る前は愛知県で主に60代以上向けのイベントを運営していました。人について学ぶのが好きで、大学では生物学を専攻しました。よく読む本のジャンルは心理学、脳科学など人の心や体の行動に関するものが多いです。ブログもそれらの本を参考に、この悩みは 仏教ではこう解決するという内容を専門語を使わずになるべくわかりやすい言葉で発信することに心がけています。もっともっと多くの方の悩み疑問にお答えしたいと思っていますので、どうぞよろしくお願いいたします。
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