「自分をわかってくれない」と苦しんでいる人が少し心の軽くなる話
こんにちは。“伝わる”コミュニケーション研究家のみさきです。
10年ほど前、「なんで自分のことが伝わらないの?」と色々、心理学系の本をはしご読みしていました。
さまざまな立場で、お互い分かり合えず苦しんでいる人は多いと思います。
今回は私たちの心について洞察してみます。
相手が自分の気持ちをわかってくれないから苦しいと思っている
「自分のことをわかってくれない」と、苦しんでいる人は多くいます。
さまざまな立場の声を聞いてみますと、
部下は
「上司が全然理解してくれないんだ。このままこの職場で続けていく自信がないよ。もっと話をわかってくれる上司だったらなぁ」
上司は
「新入社員の○○とは、会話が成り立たんよ。こちらの思いを全然わかろうとしないんだから…参ったよ」
夫は
「妻は俺の努力をちっともわかってくれない。どれだけ苦労しているかなんて、考えたことがないんだ」
妻は
「主人はいつも自分ばかり『忙しい忙しい』と言って、なかなか向き合ってくれないのよ」
「旦那に何を聞いても、だいたい面倒くさそうに『好きにしていいよ』と言われるのよね」
(関連:「自分のことをわかってくれない」と苦しんでいる方に心が軽くなる読み物)
相手の気持ちがわからないから自分は悩んでいると思っている
反対に、相手の思いが分からずに悩んでいる人もあるでしょう。
とある親御さんはお子さんのことで悩んでおり、このような話を聞きました。
「最近、中学生の息子がほとんど口をきかなくなりました。
『夕食ができたよ』と声をかけても、『うるさい!』と返されることがよくあります。
会話が減り、何を考えているのかわかりません。
思春期だと思って、そっとしておくのが良いのかとも思いますが、心配です」
好きな人がいるとき、相手の本音が知りたくて頭がいっぱいになった経験のある人は多いでしょう。
「もし、あの人にこう思われてたら」
「あの人は私のことをどう思っているだろうか」
このように、人はさまざまな立場で、
「自分の考えや気持ちをもっとわかってもらえれば」
「相手の考えていることがもっとわかれば」
深い人間関係が築けて幸せになれるだろうと信じています。
果たしてお互いわかり合える世界は幸福か
『キノの旅-the Beautiful World-』という小説があります。
シリーズ770万部を超えた人気作品です。
キノという旅人が世界旅行のように、独特の制度や技術、価値観を持つ国を訪れ、そこの国民と関わっていきます。
1話完結のストーリーで、寓話(ぐうわ)のように教訓が秘(ひ)められています。
その中で、お互いわかり合える世界は幸福なんだろうか、と考えさせられる話がありましたので、紹介します。
・・・・・
キノはある時、「人の痛みが分かる国」を訪れました。
その国は、レストランも市街も無人で、機械だけが動いています。
キノが滞在して3日目の朝、ようやくこの国の住人の男性と会いました。
その男性は、
「君は、私の思っていることがわからないのか?」
と、妙なことを尋ねてきました。
その男性は明らかな対人恐怖症で、人と会うのを恐れていました。
実はその国の人は皆、対人恐怖症で一人孤独に住んでいるというのです。
なぜそうなったのか、男が語りました。
この国では、会話を交わさなくても相手の考えていることがわかる薬が開発されました。
これでもう「自分の気持ちをわかってもらえない」という苦しみも、「相手の気持ちがわからない」という悩みもなくなり、皆幸せになれると喜び、国民全員がその薬を飲んだのです。
その男は薬を飲んだら、片思いの女性の気持ちが自分に向いていることが分かり、女性も自分の想いが分かり、すぐ結婚できたことに大喜びでした。
ところが一緒に住むようになり、男はすぐにとんでもない薬だったことが分かるのです。
お互いの心は何でも通じてしまいます。
「この料理、まずいな」
「この人のこういうところ、イライラする」
「こんなこと言う人だったのか」
「結婚するんじゃなかったな」
オブラートに包んだ会話ができません。
思ったままがお互いに通じてしまいます。
すぐに結婚生活は破局をむかえてしまいました。
その国では、事故現場で死にかけている人の心が周囲の人たちに伝わって発狂(はっきょう)したり、政治家がお互いにいつか裏切ろうとしていることを知って殺し合いになりました。
国中がパニックで、住人はお互いの思いが伝わらないよう、距離を置き、引きこもって生活するようになったのです。
・・・・・
自分の気持ちをわかってほしい、相手の気持ちを知りたい、と誰しもが願うことですが、それが本当にかなったら幸せかと考えさせられる話でした。
みんな常にきれいな心だけを持っていれば良いのですが、私たちは誰にも知られたくない醜(みにく)い心を持っています。
また見たくなかった相手の心まで見せつけられたら、その人と今まで通りにつきあえるでしょうか。
私たちはお互いの心がわかり合えず悩むこともあれば、逆にわかってしまったことで嫌な心が見えて苦しむこともあります。
振子(ふりこ)のように、どちらに振られても悩むのが、人間です。
どうしたらお互いに幸せになれるのか。
私たちが本当に心から幸せになるにはどうすればよいのかを徹底的に探究したのが仏教です。
まとめ
私たちは様々な立場で、「自分のことを分かってくれない」「相手の気持ちが分からない」から苦しんでいると思っています。
ところが、私たちの心は良いことを思うこともあれば、醜いことを思うこともあります。
心は振り子のように動いていると自覚することは、幸せの第一歩でしょう。
みさき
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