亡くなった人が「これ一つ私に伝えたかったことは何か」を考えた
こんにちは、″伝わる”技術研究家のみさきです。
『君の膵臓を食べたい』
映画の予告で見て、強烈なインパクトのタイトルに惹きつけられ、本を読んでみました。
2016年年間ベストセラー1位に選ばれた本で、(単行本フィクション・日販調べ)本屋に平積みに並んでいました。
ヒロインの女子高校生、桜良(さくら)は膵臓の病気で余命があと1年。
高校生にはとても重すぎる人生ですが、桜良には一緒にいる人を楽しませるユーモアがあり、その明るい彼女の姿が重いテーマでありながら、小説にあたたかい雰囲気をもたらしてくれます。
双葉社『君の膵臓をたべたい』紹介ページ
人生にとって大事なことを考えさせられる言葉がいくつもありましたが、そのうちの一つ、彼女の鋭い言葉を紹介します。
毎日生きている
普通に生きている皆はさ、生きるとか死ぬとかにあんまり興味ないでしょ。
(中略)
死に直面して良かったことといえば、毎日生きてるって思って生きるようになった。
彼女も病気が見つかる前は、生きるとか死ぬとかに興味はなく、ファッションや恋、人間関係や勉強のことを考えて毎日を過ごしていたんだろうと思います。
自分が死ぬのは1年以内と知らされて、彼女は毎日「生きる」ということを実感するようになります。
「生きている」ことを深く受け止める彼女の気持ちが、彼女の日記の中のこんな言葉にも表れていました。
桜が散るのを見てせつなくなるって、よく言うけど、
私は咲くのを見てもせつなくなる。
あと何回この桜を見れるかなって計算しちゃうから。
だけれどもいいこともある。
きっと私が見てる桜は同年代の誰が見る桜よりも綺麗に見えるはずだ。
死をみつめるとは
桜良は、「生きている」と実感するようになり、残された人生、何に使うか真剣に考え始めます。
彼女が自分の人生と約束し、死ぬまでに実行していったことの一部です。
- 「病気になった自分の運命を恨まずに生きよう」と決める
- 死ぬ前にやりたいことリストを作り、実行する
- 親友や家族とありのままの自分でいて、日常を過ごす
- 家族や親友に遺書を書く など……
死をみつめると自分が本当に望んでいることに集中するようになり、日常の1日1日がかけがえのない時間になるのですね。
本当の幸せになりたい人へ
死を考えることは暗いことではなく、時間、会う人、能力など自分の人生のすべてが大切なものになり、生かせるようになるために大事なことなのかもしれません。
元気なうちは、「生きている」とかみしめて生きることはほとんどなく、「私の人生は毎日が同じことの繰り返しだな」とため息ついたり、「つまんないな、さっさと生きてさっさと死にたい」くらいに虚(むな)しさを抱えています。
それが死を真面目に見つめると一日一日に価値があり、大切なものに思えてくるのでしょうね。
無常を観ずるは菩提心の一(はじめ)なり
という仏教の言葉があります。
「無常」とは、死のこと。
「菩提心」(ぼだいしん)とは、本当の幸せのことです。
まとめ
仏教では「死を明らかに観ることは、本当の幸せへの第一歩ですよ」と教えられています。
亡くなった人の遺した言葉に私たちの心が揺さぶられるのは、「生きている」ことの大切さを教えてくれるからなのかもしれません。
日本を代表する哲学者・西田幾多郎氏は6歳になったばかりの愛娘を亡くされました。
そのことを『我が子の死』で、”我が子のはかなき死ということによりて、多大な教訓を得た”と胸中を綴られています。
大切な人が残してくれた命のメッセージについて考えさせられます。
→大切な人が亡くなったときに思うこと|残してくれた命のメッセージとは
みさき
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